「哀惜」「愛惜」の意味と違い
「哀惜」と「愛惜」は同じ読み方で意味も混同しやすい言葉です。使い分けに困った経験のある人もいるかもしれませんが、この2つには違いがあります。日常の様々なシーンでよく使われる表現なので、正しい使い方を確認しておきましょう。
本記事では「哀惜」と「愛惜」の違いについて解説していきます。 ぜひマスターし、自信を持って使えるようになりましょう。
「哀惜」
「哀惜」は「人の死などを悲しむこと・惜しむこと」を意味します。深い悲しみの感情を表しており、「彼女の死を哀惜する」「恩師の死に哀惜の念を抱く」などのように使われます。類語として「追悼」「哀悼」などが挙げられます。
「哀惜」の「哀」は訓読みで「かなしい」「かなしむ」と読み、言葉どおり「悲しい」「悲しむ」という意味を持ちます。「惜」は訓読みで「おしむ」と読み、「思いきれず、心が残る」「失いたくないと思う」「おしむ」という意味を持ちます。したがって「哀惜」は「悲しみ惜しむこと」という意味になります。
「哀惜」は人やものなど失われたことに対する深い悲しみや惜しむ気持ちを表現しています。人が亡くなったり、大切なものが失われたりした時に使用されることが多くなります。一方で「愛惜」は、読みが同じでもニュアンスが異なります。
「愛惜」
「愛惜」は「手放したり傷つけることを惜しんで大切にすること」「気に入って深く愛すること」を意味します。「父が愛惜した遺品」「兄が愛惜する本」「愛惜の念が抑えきれない」などのように使われます。類語として「未練」が挙げられます。
「愛惜」の「愛」は訓読みで「おしむ」と読み、言葉どおり「おしむ」「大事なものを手放したくないと思う」という意味を持ちます。「惜」は上述したとおり、「思いきれず、心が残る」「失いたくないと思う」「おしむ」という意味を持ちます。したがって「愛惜」は「大事なものを手放したくないとおしむ」という意味になります。
「愛惜」は時間、物など、手放したくないという気持ちで大切に思うことを表します。悲しみというよりも、深く愛して大切にする気持ちが強調されます。
このように「哀惜」と「愛惜」はどちらも「惜」という字が入っており、紛らわしいですが意味に違いがあります。「哀惜」は失ったことに対する悲しみ・惜しむ気持ちを表し、「愛惜」は愛情を持って大切にする気持ちを表します。文脈によって適切に使い分けることが重要です。
記事の参考文献
- 編 藤堂 明保・松本 昭・竹田 晃・加納 喜光・ (2001)『漢字源』改訂新版, Gakken.
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.『漢字ペディア』.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年9月18日).
- 編 新村 出 (2008)『広辞苑』第六版, 岩波書店.
- 編 沖森 卓也・中村 幸弘(2015).『ベネッセ表現読解国語辞典』
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
- 小学館.『デジタル大辞泉』. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年9月18日).
コメントを残す