「一環」と「一貫」の意味と違い
「一環」と「一貫」は、同じ読み方でも意味が異なる同音異義語です。
そのニュアンスや使い方には微妙な違いがあるので、混同しないようにそれぞれの意味をしっかりと把握しましょう。
本記事ではその「一環」と「一貫」の意味と違いを深掘りし、用例などを通じて、使い分けのポイントについて解説していきます。
紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がりますので、ぜひ参考にしてみてください。
「一環」
「一環」は「全体としてつながりをもつものの一部分」という意味を持ちます。
「一環」の「一」は「ひとつ」「数の名」という意味があり、「環」は「わ」「輪の形」という意味があります。
したがって「一環」は、漢字だけから考えると「輪の一つ」という意味になります。
ただ実際の意味は「輪の一つ」ではなく、「全体としてつながりをもつものの一部分」ということで、若干の相違があるので、注意が必要です。
「一環」は「この講座は教育の一環として設けられた」「これも環境保護の一環である」「社内イベントも仕事の一環だ」のように使われ、「一環」の類義語としては、「一部」「部分」「局部」「局所」などが挙げられます。
このように、「一環」は「全体の一部分」を指す言葉であり、何か大きな問題や計画、物事の中に含まれる一つを指す時に使われることが多く、下述する「一貫」とは意味が大きく異なります。
「一貫」
「一貫」は、「一つの考え方ややり方で貫き通すこと」「同じ考え方や方法で貫くこと」という意味を持ちます。
「一貫」の「一」は上述の通り「ひとつ」「数の名」という意味があり、「貫」は「つらぬく」「やりとおす」という意味があります。
したがって「一貫」は、「一つのことを貫く」すなわち「一つの考え方ややり方で貫き通すこと」という意味になります。
「彼の思想は一貫している」「一貫性のない主張」「方針が一貫している」のように使われ、「一貫」の類義語としては、「貫く」「徹する」「脈絡」などが挙げられます。
また、「終始一貫」「首尾一貫」のように四字熟語の一部としても使われます。
このように、「一貫」は「一つのことを貫き通す」という意味を表し、「考え方ややり方などを変えずにやり通す」というポジティブな意味で使われることが多いです。
以上のように「一環」は、「全体としてつながりをもつものの一部分」という意味があり、何か大きな問題や計画などの中に含まれる一つを指す時などに使われます。
一方「一貫」は「一つの考え方ややり方で貫き通すこと」という意味があり、「信念を曲げない」「やり抜く」といったようなポジティブな意味で使われることが多いです。
記事の参考文献
- 編 山田忠雄、柴田武、酒井憲二、倉持保男、山田明雄、上野善道、井島正博、笹原宏之 (2012)『新明解国語辞典』第七版, 三省堂.
- 著 北原 保雄(2011-2019)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
- 編 新村出 (2018,2019)『広辞苑』第七版, 岩波書店.
- 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2025年1月7日).
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2025年1月7日).
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
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