「一切」と「一再」の違い
「一切」と「一再」という言葉は読み方は同じですが、意味がそれぞれ違う同音異義語です。
「一切」も「一再」も、それぞれ「ならず」を付けて「一切ならず」「一再ならず」という言葉として使うことがあります。
この場合、まったく逆の意味を持つことになりますので注意が必要です。
「一切」とは?マンガで使い方をわかりやすく解説
「一切」は、「全部、すべて残らず」という意味を持ちます。
例えば、
- 「この会の一切を取り仕切る」というと、「この会のすべてを取り仕切る」
- 「一切を失った」というと、「すべてを失った」
という意味になります。
もともと「切」という漢字には「切る」という意味のほかに「すべて」という意味もあるので、「一切」は、「全部、すべて残らず」という意味を持ち、「合」を合わせた「合切」という言葉も「すべて」を表します。
そして、「一切」の下に打ち消しの言葉をつけると「まったく、全然」という意味になります。
たとえば、「彼女の事情は一切知らない」というと「彼女の事情はまったく知らない」という意味になるのです。
「一再」とは?マンガで使い方をわかりやすく解説
「一再」は「一、二度」や「一、二回」という意味を持ちます。
たとえば、「彼女に怒られたのは一再ではない」というと、「怒られたのは一度や二度ではない」という意味になります。
「一切」と同じように「一再」にも否定の「ならず」を付けて「一再ならず」と表現することがあります。
「一再ならず」というと、「一度や二度ではない」という意味になります。
「一切」と「一再」の使い分け
上述のように、「一切」は、「全部、すべて残らず」で、「一再」は「一、二度」や「一、二回」を意味します。
「一切」と「一再」の使い分けはとても容易で、文章で使う際は問題ありませんが、同音異義語の特性上、音が同じため会話で使う際は、他の言葉で言いかえるなど、工夫が必要かもしれません。
理解度チェック!「一切」「一再」のクイズ問題
Q1
「〇〇」は、「全部、すべて残らず」という意味を持ちます。〇〇に入る言葉は?
A1
一切
Q2
「彼女の事情は一再知らない」という使い方は正しい?
A2
間違い。正解は、「彼女の事情は一切知らない」です。
Q3
「一切ならず」は「まったく起こらない」という意味は正しい?
A3
正しい
Q4
「彼女に怒られたのは〇〇ではない」は「怒られたのは一度や二度ではない」という意味です。
〇〇に入る言葉は?
A4
一再
Q5
「一切ならず」は「頻繁に起こる」という意味は正しい?
A5
間違い。正解は、「一再ならず」は「頻繁に起こる」という意味です。
記事の参考文献
- 編 金田一京助 編集代表 深谷圭助(2015) 『例解学習 国語辞典』第十版 小学館
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年8月26日).
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
-
編 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版.三省堂.
-
編著 北原保雄 (2010)『明鏡国語辞典』第二版, 大修館書店
-
編 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之 (2011)『新明解国語辞典』第七版, 三省堂.