「平行」「並行」「平衡」の意味と違い

「平行」「並行」「平衡」の意味と違い

「平行」「並行」「平衡」の意味と違い

平行」「並行」「平衡」はいずれも「へいこう」と読む同音異義語です。日常生活やビジネスシーンで使われていますが、これらの言葉にはどのような違いがあるのでしょうか。

本記事では「平行」「並行」「平衡」の意味と違いを深掘りし、用例などを通じて、使い分けのポイントについて解説していきます。

紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がります。ぜひ参考にしてみてください。

「平行」

「平行」

平行」は「同一平面上の二直線が交らわないこと」「空間の直線と平面、あるいは平面と平面が交わらないこと」また「二つ以上の物事が同時に行われること」という意味を持ちます。

平行」の対義語としては「交差」があります。

平行」の「平」は「たいら」「かたよらない」の意味を持ち、「行」は「いく」「すすむ」「おこなう」という意味を持ちます。

したがって「平行」は「二つの直線が、互いに等間隔を保ちながら進むこと」すなわち「同一平面上の二直線や直線と平面などが、どこまで行っても交差しない状態」という意味になります。

幾何学・数学の分野では、「同一平面内にある二本の直線や同一空間内の二つ面が(いくら延長しても)交わらないこと」として用いられます。

「用紙に直線Aと平行な線を引く」「平行四辺形の特徴について学ぶ」「机を3列平行に並べる」のように使います。

平行」は、「決して交わらないこと」を比喩して「彼らの議論は平行線のまま終了する」のように、互いの意見などがいつまでも一致しないことの意味でも使われます。

また、「平行」には「二つ以上の物事が同時に行われること」という意味もあり、後述する「並行」とは同じ意味になります。

「彼女は勉強と平行してバイトも続けている」のように使われますが、「二つ以上の物事が同時に行われること」という意味では、一般的に「並行」の方が用いられます。

「並行」

「並行」

並行」は「二つ以上のものが並んで行くこと」「二つ以上の物事が同時に行われること」という意味を持ちます。

並行」の「並」は、「ともに」「(同列に)ならぶ」の意味を持ち、「行」は上述のとおり、「いく」「すすむ」「おこなう」という意味を持ちます。

したがって「並行」は、「並んで進むこと」すなわち「二つ以上のものが並んで行くこと」という意味になり、「二台のバスが並行して走る」「線路と並行に走る道路が続く」のように使われます。

例えば、線路と「へいこう」する道路の場合は、「平行」を使えば、線路と道路はどこまで行っても決して交わることがない関係となります。

一方「並行」を使えば、線路と道路がある地点で交差したとしても、おおよそ同じ方向に並んで走っていれば良いことなり、場合によっては交わる可能性もあるという点が、「平行」との違いです。

また、「二つ以上の物事が同時に行われること」との意味では、「二つのプロジェクトを並行して進める」「手術と並行して薬物治療も継続する」などのように使われます。

並行」には、二つの意味がありますが、「二つ以上の物事が同時に行われること」の意味で使われる場合が多いです。

なお「併行」と「並行」は同義語ですが、基本的には、新聞紙面では「並行」が使われることが多いです。

「平衡」

「平衡」

平衡」は、「物事のつり合いがとれて安定した状態にあること」「力学的に釣り合っている、力学的平衡」という意味を持ちます。

平衡」の類義語としては、「均衡」があります。

平衡」の「平」は上述のとおり、「たいら」「かたよらない」の意味を持ち、「衡」は「はかり」「つりあい」という意味を持ちます。

したがって「平衡」は、「平らにつり合いがとれること」すなわち「物事のつり合いがとれて安定した状態にあること」という意味になります。

「体の平衡感覚を失って倒れる」「勢力の平衡がついに破られた」「市場の需給が平衡するポイントを模索する」のように使われます。

また、「平衡」は物理学や化学、経済学などで使われることが多く、「エネルギーの移動や変化が起こらず、安定を保った状態」という意味もあります。

以上のように「平行」は、二つ以上の線や面などが互いに交わらない状態を表し、幾何学や数学の分野で使われます。

また複数の物事が「同時進行すること」という意味もあります。

ただこの意味では「並行」が使われることが一般的で、さらに「並行」は、「並んで進むこと」を意味します。

最後に「平衡」は、二つ以上の力や要素が釣り合って「安定している状態」を意味します。

記事の参考文献

  • 編 藤堂 明保・松本 昭・竹田 晃・加納 喜光・ (2001)『漢字源』改訂新版, Gakken.
  • 公益財団法人日本漢字能力検定協会.『漢字ペディア』.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年12月5日).
  • 編 新村 出 (2008)『広辞苑』第六版, 岩波書店.
  • 編 沖森 卓也・中村 幸弘(2015).『ベネッセ表現読解国語辞典』
  • 編  一般社団法人共同通信社  (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
  • 小学館.『デジタル大辞泉』. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年12月5日).
北澤篤史サイト運営者
1984年(昭和59年)、大阪府生まれ。言葉への関心が高じ、「ことわざ」「漢字」「四字熟語」をテーマに複数のウェブサイトを立ち上げる。これらのサイトは、小中学校の教材として利用されるほか、単語カードやタイピングゲームなど多様な形で活用されている。著書に『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(講談社)、『マンガでわかる すごい!ことわざ図鑑〈試験に出る〉』(講談社)がある。