「歓声」と「喚声」の意味と違い
「歓声」と「喚声」は、いずれも「かんせい」と読み、「大声をあげること」という共通点はありますが、それぞれの使い方やニュアンスに微妙な違いがあります。
日常生活やビジネスシーンなどで使われていますが、どのような違いがあるのでしょうか。
本記事ではその「歓声」と「喚声」の意味と違いを深掘りし、用例などを通じて、使い分けのポイントについて解説していきます。
紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がりますので、ぜひ参考にしてみてください。
「歓声」

「歓声」は、「喜んであげる大声」「喜びを抑えきれずに叫ぶ声」という意味を持ちます。
「歓声」の「歓」は、「よろこぶ」「楽しむ」の意味があり、「声」は、「人や動物が出す声」「言葉を出す」という意味があります。
したがって「歓声」は、「喜んで出す声」すなわち「喜びを抑えきれずに叫ぶ声」という意味になります。
なお、「歓声」の類義語は、「歓呼」「喚声」「喝采」などが挙げられ、「歓声」は「全員無事との報告に歓声があがる」「彼のホームランに観客は大歓声をあげた」「シュートが決まった瞬間、歓声が湧きあがった」のように使われます。
「歓声」は、大勢でいるときに全員で共有できるような、大きな喜びや嬉しさがこみ上げ、無意識のうちに思わず声を出し、叫んでしまう行為を指します。
また「歓声」とは、歓喜の表れのことで、スポーツの試合で得点や勝利が決まった時、コンサートや演奏会などで感動した時など、喜びや感動を表現するためのポジティブな気持ちが出る声を表します。
「喚声」
「喚声」は、「興奮して大声で叫ぶ声」「興奮したり驚いたりしたときに発する叫び声」という意味を持ちます。
「喚声」の「喚」は、「大声で呼ぶ」「叫ぶ」「わめく」の意味があり、「声」は上述のとおり、「人や動物が出す声」「言葉を出す」という意味があります。
したがって「喚声」は、「大声で叫ぶ声」すなわち「興奮したり驚いたりしたときに発する叫び声」という意味になります。
なお「喚声」の類義語は、「叫び声」「悲鳴」「絶叫」などがあり、「喚声」は、「地震が起こり、教室中に喚声が響いた」「白熱したゲーム展開に観客の喚声が止まない」「街中で爆発音が聞こえ、人々が喚声をあげる」のように使われます。
「喚声」は、大勢でいる時、その場の雰囲気が盛り上がって思わず大声で叫んだり、突然の出来事や予期しないことが起こり、驚きや恐怖を感じたときに伴う叫び声を指します。
感情が爆発した時に発する叫び声という意味では、「歓声」も含まれますが、上述のとおり「歓声」は「喜びの声」という意味合いが強く、驚きや恐怖などのネガティブな感情を表す「喚声」とはニュアンスが異なります。
また、「喚声」には、大勢が興奮して叫んだり、戦いに臨むときの「ときの声」など、闘争心のある声色も含むことから、似た意味を持つ「喊声(かんせい)」と同じように使われることがあります。
ちなみに「喊声」とは、「戦場で士気を高めるためにあげる叫び声」を意味しますが、「喊」が常用漢字表にないため、新聞紙面では「喚声」と表記されています。
以上のように「歓声」は、「喜びを抑えきれずに叫ぶ声」という意味を持ち、喜びや感動が含まれる場面で日常的にもよく使われます。
一方「喚声」は、「興奮したり驚いたりしたときに発する叫び声」という意味を持ち、突然の出来事などによる驚きや恐怖を感じたときに使われます。
記事の参考文献
- 偏 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版,三省堂.
- 偏 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之(2011)『新明解国語辞典』第七版,三省堂.
- 編著 北原保雄(2010)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
- 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2025年1月15日).
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2025年1月15日).
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
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