「懸命」と「賢明」の意味と違い
「懸命」と「賢明」は、同じ読み方でも意味が異なる同音異義語です。
そのニュアンスや使い方には微妙な違いがあるので、混同しないようにそれぞれの意味をしっかりと把握しましょう。
本記事ではその「懸命」と「賢明」の意味と違いを深掘りし、用例などを通じて、使い分けのポイントについて解説していきます。
紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がりますので、ぜひ参考にしてみてください。
「懸命」

「懸命」は「力いっぱいがんばること」「力の限りを尽くしてがんばること」という意味を持ちます。
「懸命」の「懸」は「かける」「かかる」「つりさげる」という意味があり、「命」は字の如く「いのち」という意味があります。
したがって「懸命」は、漢字だけから考えると「命をかける」という意味になります。
しかし実際は、本当に命をかけるのではなく、「力いっぱいがんばること」という意味で使われるので、若干の相違がある点に注意が必要です。
「懸命」は「彼の懸命の努力が実った瞬間だった」「何事にも一生懸命に取り組む」「懸命に勉強すれば結果はついてくる」のように使われ、「懸命」の類義語としては、「真剣」「熱心」「真面目」「真摯」などが挙げられます。
このように、「懸命」は、「物事に全力で取り組む様子」を表す言葉であり、頑張りの度合いを伝えたい時に使用します。
なお、「懸命」を使った四文字熟語である「一生懸命」は「一所懸命」と書かれることもありますが、どちらを使っても問題ありません。
元々は「一所懸命」が使われており、最初は「武士が賜った『一ヵ所の領地』を命がけで守り、生計を立てる」という意味を持っていましたが、この「命がけで守る」という意味が転じて「力いっぱいがんばること」という意味になりました。
そして「一ヵ所を守る」という意味も持たなくなり、「イッショケンメイ」が「イッショウケンメイ」へ長音化して発音されるようになり、「一生懸命」を一般的に使うようになったと言われています。
「賢明」
「賢明」は、「賢くて的確な判断が下せる様子」「適切な判断や処置が下せる様子」という意味を持ちます。
「賢明」の「賢」は「かしこい」「まさる」「すぐれる」という意味があり、「明」は「さとい」「かしこい」という意味があります。
したがって「賢明」は、「賢くて的確な判断が下せる様子」という意味になります。
「すぐに確認を取ったのは賢明な判断だった」「投資をするには賢明な選択が必要だ」「営業部の部長はとても賢明な人だ」のように使われ、「賢明」の類義語としては、「利巧」「知的」「英明」「明哲」などが挙げられます。
このように、「賢明」は「物事を冷静に論理的に判断する様子」を表し、判断の正確さの度合いを伝えたい時に使用します。
以上のように「懸命」は、「力いっぱいがんばること」という意味があり、頑張りの度合いを伝えたい時に使用します。
一方「賢明」は「賢くて的確な判断が下せる様子」という意味があり、判断の正確さの度合いを伝えたい時に使用します。
記事の参考文献
- 編 山田忠雄、柴田武、酒井憲二、倉持保男、山田明雄、上野善道、井島正博、笹原宏之 (2012)『新明解国語辞典』第七版, 三省堂.
- 著 北原 保雄(2011-2019)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
- 編 新村出 (2018,2019)『広辞苑』第七版, 岩波書店.
- 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2025年1月23日).
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2025年1月23日).
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
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