「原型」と「原形」の意味と違い

「原型」と「原形」の意味と違い

「原型」と「原形」の意味と違い

原型」と「原形」は、いずれも「げんけい」と読み、「元のかたち」という共通点はありますが、それぞれの意味と使われる場面が異なります。

日常生活やビジネスシーンなどで多く使われていますが、どのような違いがあるのでしょうか。

本記事ではその「原型」と「原形」の意味と違いを深掘りし、用例などを通じて、使い分けのポイントについて解説していきます。

紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がりますので、ぜひ参考にしてみてください。

「原型」

「原型」とは

原型」は、「製作物の元になる型」「元になる構造・構成を持つもの」という意味を持ちます。

原型」の「原」は、「物事のもと」「おおもと」「はじめ」の意味があり、「型」は、「かた」「鋳型」という意味があります。

したがって「原型」は、「元になる型」すなわち「元になる構造・構成を持つもの」という意味になります。

なお、「原型」の類義語は、「雛形」「基準」「基盤」などが挙げられ、「原型」は「話し合いを重ね、新製品の原型がついに完成した」「新しい洋服の原型を作るだけで1週間もかかった」「古代建築の原型を参考にデザインする」のように使われます。

原型」とは、おおまかに言えば「元になる型」という意味であり、何かを作り出す際の元になる形や見本・手本となるもののことを指しますが、「原型」は、具体的にいえば下記のような複数の意味合いがあります。

1つ目は「鋳物や彫刻作品などの元になる型」を意味し、土や石膏で作られるものを指し、鋳物など同じものをいくつも作るときに用いられます。

次に「洋裁で、洋服の製図の基礎となる型」という意味があり、洋裁において服を作るときの基本となる平面製図の元の型を指します。

原型」は上述のように、製造する造形の雛形となるものを指し、その「型」を元にして同じデザインやスタイルの製品を量産する際に「原型」が活用され、上記2つの意味合いで使われることが一般的です。

なお「原型」は「動植物の現存する諸種の類から抽象して、それらの根源とされる型」という意味もあり、生物学で「馬の原型」のように使われ、「動物や植物のおおもととされる種類の姿かたち」を指します。

さらに「表面に現れる現象の背後にあるもの、無意識のうちに働く潜在的な力」という意味もあり、心理学で「ある現象を発生させる根本的な要因となるもの」を指します。

「原形」

「原形」とは

原形」は、「元の形」「変化する前の形」という意味を持ちます。

原形」の「原」は上述のとおり、「物事のもと」「おおもと」「はじめ」の意味があり、「形」は「かたち」「ありさま」「外に現れた姿」という意味があります。

したがって「原形」は、「おおもとの形」すなわち「変化する前の形」という意味になります。

なお「原形」の類義語は、「祖型」「元形」「素形」などがあり、「原形」は、「事故後の車は大きく損傷し、ほとんど原形をとどめない」「文化財は修復作業を経て、原形に近い状態を取り戻した」「長い年月を経ても遺跡は、ほぼ原形をとどめている」のように使われます。

原形」は、物の元の形や姿のことを指し、見た目が変わったものに対しても変わらずに残されているものに対しても使われます。

ただ、何かが変化した後、その最初の特徴がどの程度残されているか、あるいは完全に失われてしまったかを比較する時に使われることを多いです。

以上のように「原型」は、「元になる構造・構成を持つもの」という意味も持ちますが、主として「製作物の元になる型」という意味が一般的であり、人が作る製作物の分野で多く使われます。

一方「原形」は、「元の形」「変化する前の形」という意味を持ち、見た目が変化したものに対しても変化せずに残されているものに対しても幅広いものに対して使うことができ、その変化する前の形を指します。

記事の参考文献

  • 偏 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版,三省堂.
  • 偏 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之(2011)『新明解国語辞典』第七版,三省堂.
  • 編著 北原保雄(2010)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
  • 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2025年1月20日).
  • 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2025年1月20日).
  • 編  一般社団法人共同通信社  (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
北澤篤史サイト運営者
1984年(昭和59年)、大阪府生まれ。言葉への関心が高じ、「ことわざ」「漢字」「四字熟語」をテーマに複数のウェブサイトを立ち上げる。これらのサイトは、小中学校の教材として利用されるほか、単語カードやタイピングゲームなど多様な形で活用されている。著書に『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(講談社)、『マンガでわかる すごい!ことわざ図鑑〈試験に出る〉』(講談社)がある。