「苦渋」と「苦汁」の意味と違い
「苦渋」と「苦汁」は、同じ読み方でも意味が異なる同音異義語です。
そのニュアンスや使い方には微妙な違いがあるので、混同しないようにそれぞれの意味をしっかりと把握しましょう。
本記事ではその「苦渋」と「苦汁」の意味と違いを深掘りし、用例などを通じて、使い分けのポイントについて解説していきます。
紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がりますので、ぜひ参考にしてみてください。
「苦渋」
「苦渋」は「悩み苦しむこと」「物事が上手くいかず苦しみ悩むこと」という意味を持ちます。
「苦渋」の「苦」は「くるしい」「くるしむ」「にがい」という意味があり、「渋」は「しぶる」「とどこおる」「にがにがしいさま」という意味があります。
したがって「苦渋」は、「苦しみ渋る」すなわち「物事が上手くいかず苦しみ悩むこと」という意味になります。
「苦渋」は「苦渋に満ちた表情をしている」「これは苦渋の決断だった」「苦渋の選択を迫られた」のように使われ、「苦渋」の類義語としては、「苦悩」「苦患」「苦痛」「苦衷」などが挙げられます。
このように、「苦渋」は「苦しみ悩む」という「心の苦しみ」を指す言葉で、人の心の葛藤も表します。
一方の「苦汁」も「苦渋」と同様に、苦しみを表しますが、苦しみの内容が違います。
「苦汁」
「苦汁」は、「苦い経験」「苦しい経験」という意味を持ちます。
「苦汁」の「苦」は上述の通り「くるしい」「くるしむ」「にがい」という意味があり、「汁」は「しる」「つゆ」という意味があります。
したがって「苦汁」は、「苦い汁」すなわち「苦しい経験」という意味になります。
「苦汁をなめる結果に終わった」「苦汁を飲まされることとなった」「悪者に苦汁を飲ませることができてすっきりした」のように使われ、「苦汁」の類義語としては、「辛酸」「苦杯」「辛苦」などが挙げられます。
このように、「苦汁」は「嫌な経験」を指す言葉として使われます。
なお、「苦渋を飲む」と「苦汁を飲む」や「苦渋を味わう」と「苦汁を味わう」など、「苦渋」と「苦汁」の使い方がどちらが適切なのか難しく感じることがあるかもしれません。
「苦渋」は「苦くて渋い」という味を表す言葉なので、「苦渋を味わう」が正しく、「苦汁」の「汁」は飲むものなので、「苦汁を飲む」が正しい使い方となると覚えていれば、わかりやすいです。
以上のように「苦渋」は、「物事が上手くいかず苦しみ悩むこと」という意味があり、心の苦しみを指す言葉として使われます。
一方「苦汁」は「苦しい経験」という意味があり、嫌な経験を指す言葉として使われます。
記事の参考文献
- 編 山田忠雄、柴田武、酒井憲二、倉持保男、山田明雄、上野善道、井島正博、笹原宏之 (2012)『新明解国語辞典』第七版, 三省堂.
- 著 北原 保雄(2011-2019)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
- 編 新村出 (2018,2019)『広辞苑』第七版, 岩波書店.
- 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2025年1月5日).
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2025年1月5日).
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
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