「急迫」と「窮迫」の意味と違い
「急迫」と「窮迫」は、同じ読み方でも意味が異なる同音異義語です。
そのニュアンスや使い方には微妙な違いがあるので、混同しないようにそれぞれの意味をしっかりと把握しましょう。
本記事ではその「急迫」と「窮迫」の意味と違いを深掘りし、用例などを通じて、使い分けのポイントについて解説していきます。
紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がりますので、ぜひ参考にしてみてください。
「急迫」
「急迫」は「事態が進んで無事には済まなくなりそうになること」「せっぱつまること」という意味を持ちます。
「急迫」の「急」は「いそぐ」「さしせまっている」「とつぜん」という意味があり、「迫」は「せまる」「おいつめる」「苦しめる」という意味があります。
したがって「急迫」は、漢字だけから考えると「急いで迫ってくる」という意味になります。
しかし実際は「事態が進んで無事には済まなくなりそうになること」「せっぱつまること」という意味として使われるので、若干の相違がある点に注意が必要です。
「急迫」は「争いが激しくなり、情勢が急迫している」「事態が急迫したときのみ許可される」「急迫性の定義」のように使われ、「急迫」の類義語としては、「切迫」「火急」「緊迫」「押詰」などが挙げられます。
このように、「急迫」は、そのままにしておくとせっぱつまった状態になるという「せっぱつまる状況が差し迫っている途中段階」を表す言葉として使われます。
下述する「窮迫」は、同じ「せっぱつまる」ということを表しますが、意味は変わってきます。
「窮迫」
「窮迫」は、「生活に困った状態になること」「経済的にせっぱつまった状態になること」という意味を持ちます。
「窮迫」の「窮」は「行きづまる」「身動きができない」「苦しむ」という意味があり、「迫」は上述の通り「せまる」「おいつめる」「苦しめる」という意味があります。
したがって「窮迫」は、漢字だけから考えると「行きづまり苦しむこと」という意味になります。
しかし実際は、「経済的にせっぱつまった状態になること」という意味で使われるので、「窮迫」も若干の相違がある点に注意が必要です。
「生活が窮迫し、心も貧しくなる」「財政が窮迫する」「貯金が底をつき、窮迫した生活を過ごすことになった」のように使われ、「窮迫」の類義語としては、「困窮」「窮苦」「窮境」などが挙げられます。
このように、「窮迫」は「すでにせっぱつまって困り切っている状況」を表す言葉として使われ「急迫」の「途中段階」とは違います。
以上のように「急迫」は、「事態が進んで無事には済まなくなりそうになること」という意味があり、「せっぱつまる状況が差し迫っている途中段階」を表します。
一方「窮迫」は「経済的にせっぱつまった状態になること」という意味があり、「すでにせっぱつまって困り切っている状況」を表します。
記事の参考文献
- 編 山田忠雄、柴田武、酒井憲二、倉持保男、山田明雄、上野善道、井島正博、笹原宏之 (2012)『新明解国語辞典』第七版, 三省堂.
- 著 北原 保雄(2011-2019)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
- 編 新村出 (2018,2019)『広辞苑』第七版, 岩波書店.
- 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2025年1月12日).
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2025年1月12日).
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
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