「不信」「不審」の意味と違い
「不信」と「不審」は、同じ読み方でも意味が異なる同音異義語です。日常、様々な場面で使われますが、どのような違いがあるのでしょうか。
本記事ではその「不信」と「不審」の意味と違いを深掘りし、用例などを交え、使い分けのポイントについて解説していきます。
紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がります。ぜひ参考にしてみてください。
「不信」
「不信」は、「信じないこと」「信用できないこと」という意味を持ちます。
「今回の問題は、政治不信を招く可能性がある」「彼の言動には、不信の念を抱くことが多い」のように「名詞」として多く使われます。
「不信」の類義語としては、「隔意」「疎意」「隔たり」などがあります。
「不信」の「不」は否定を表す文字で「~しない・~でない」という意味を持ち、「信」は「まこと」「うそ偽りがない」「疑わない」という意味を持ちますので、「不信」は、「信用できない」という意味になります。
なお「不信」は主に人や組織などに対し使い、「人間不信」「政治不信」「不信感」など多くの言葉に併せて使われます。
さらに「不信」には、「誠実でないこと」「信仰心がないこと」という意味もあります。
「誠実でないこと」は言動などに誠実さや真実味が感じられないなど、主に人間関係において用いられます。
「不審」
「不審」は「はっきりしない点があって、疑いを抱くこと」や「いぶかしく思うこと」の意味を持ちます。
「昨晩近所で、不審な人がうろついていた」「不審者の目撃情報に警察が対応する」「挙動不審」のように使われます。
「不審」の類義語としては、「疑い」「懐疑」「疑義」などが挙げられます。
「不審」の「不」は上述のとおり「否定を表す」意味を持ち、「審」は「つまびらか」「あきらかに」「詳しく調べてはっきりさせる」という意味を持ちます。
したがって「不審」は「はっきりしない」すなわち「はっきりしない点があって、疑いを抱くこと」という意味を持ちます。
「不審」は物事や行動、様子などが普段とは異なったり、初見の相手に対しても「怪しい」「疑わしい」と感じる際に用いられます。
なお、「不審」には「嫌疑を受けること」つまり「悪いことをしたのではないかという疑いを受ける」という意味もあります。
以上のように「不信」は誠実さを欠く言動などから、人や組織などを対象に「信頼が失われた」「信用できない」と感じる場合に使われ、「不審」は「怪しい」「疑わしい」と感じる際に使われます。
記事の参考文献
- 偏 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版,三省堂.
- 偏 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之(2011)『新明解国語辞典』第七版,三省堂.
- 編著 北原保雄(2010)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
- 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年11月9日).
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年11月9日).
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
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