「非難」と「批難」の意味と違い

「非難」と「批難」の意味と違い

「非難」と「批難」の意味と違い

非難」と「批難」は、いずれも「ひなん」と読み、どちらも「他者を責める」の意味を持つ同音同義語ですが、ニュアンスに微妙な違いがあります。

日常生活やビジネスシーンなどでよく見聞きしますが、どのような違いがあるのでしょうか。

本記事ではその「非難」と「批難」の意味と違いを深掘りし、用例などを通じて、使い分けのポイントについて解説していきます。

紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がりますので、ぜひ参考にしてみてください。

「非難」

「非難」とは

非難」は、「相手の欠点や過失を取り上げて責めること」という意味を持ちます。

非難」の「非」は、「正しくない」「悪く言う」「そしる」の意味があり、「難」は、「容易でない」「非を責める」「とがめる」「なじる」という意味があります。

したがって「非難」は、「悪く言って責めること」すなわち「相手の欠点や過失を取り上げて責めること」という意味になります。

なお、「非難」の類義語は、「指弾」「糾弾」「弾劾」「罵倒」などが挙げられ、「非難」は、「環境汚染を引き起こした会社は、多くの住民から非難を浴びた」「戦争を引き起こした指導者は、国際社会から非難された」「被災地への対応の遅れに対し、非難が高まる」のように使われます。

非難」は、他人の過失や失敗を指摘して責めることを言い、人を強く責め立てる時に使う言葉です。

感情的な要素が強く、冷静な指摘や客観的な評価だけの場合には用いません。

また「非難」は、他人の言動や主張に対して異議や反対を表明する、誰かの行動や考え方に対し、否定的な意見を表明することも指します。

道徳的・社会的な事柄に関して、相手を強く責めるようなニュアンスがあります。

「批難」

「批難」とは

批難」は、「相手の欠点や過失を取り上げて責めること」という意味を持ちます。

批難」の「批」は、「ただす」「是非を決める」の意味があり、「難」は上述のとおり、「容易でない」「非を責める」「とがめる」「なじる」という意味があります。

したがって「批難」は、「非を責めて是非を決める」すなわち「相手の欠点や過失を取り上げて責めること」という意味になり、前述の「非難」との実質的に意味の違いはありません。

なお「批難」の類義語は、「批判」「糾弾」「弾劾」「責」などがあり、「批難」は、「新しい教育制度に対し、専門家が批難の声を上げる」「政策の問題点を批難する記事が掲載された」「政府のコロナ対策に対し、多くのメディアが批難をした」のように使われます。

批難」の場合、使われている漢字の「批」が「突き合わせて是非・良否を決める」や「他人への否定的な評価」という意味合いを持つことから、相手の言動や行動を冷静に分析し、悪い点を指摘して責めるニュアンスがあります。

そして「批難」は、冷静で客観的な視点から、相手の間違いや欠点を指摘するだけでなく、批評や評価を含むことが多いです。

自分が正しいと思う考えや方法を示し、相手に対して改善や修正を求めるという意味合いも「批難」には含まれています。

以上のように「非難」は、「相手の欠点や過失を取り上げて責めること」という意味を持ち、他人の欠点や犯した過ちを指摘して、人を強く責め立てる時に使う言葉です。

一方「批難」は、「非難」と同じ意味に加え、相手の間違いや欠点を指摘するだけでなく、批評や批判を含んで論じるニュアンスが強くなり、理性的に異議を申し立てることを表します。

なお「非難」と「批難」は、各国語辞典でも同義語として扱われ、「非難批難」などとして同じ項目に載っていることが多いです。

より一般社会に浸透しているのは「非難」の方で、現代では、ほとんどの場合「非難」が使われるので、「批難」を無理に使わない方が無難でしょう。

記事の参考文献

  • 偏 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版,三省堂.
  • 偏 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之(2011)『新明解国語辞典』第七版,三省堂.
  • 編著 北原保雄(2010)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
  • 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2025年3月11日).
  • 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2025年3月11日).
  • 編  一般社団法人共同通信社  (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.



北澤篤史サイト責任者

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