「包容」と「抱擁」の意味と違い
「包容」と「抱擁」は、いずれも「ほうよう」と読み、「(心や体を)包み込む」という共通点はありますが、それぞれの意味と使われ方には違いがあります。
日常生活などでよく見聞きしますが、どのような違いがあるのでしょうか。
本記事ではその「包容」と「抱擁」の意味と違いを深掘りし、用例などを通じて、使い分けのポイントについて解説していきます。
紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がりますので、ぜひ参考にしてみてください。
「包容」

「包容」は、「包み込むこと、包み入れること」や「心が大きく、他人や他人の意見を受け入れること」という意味を持ちます。
「包容」の「包」は、「つつむ」「中の物を包み込む」の意味があり、「容」は、「入れる」「中に入れる」「受け入れる」という意味があります。
したがって「包容」は、「包み入れること」すなわち「心が大きく、他人や他人の意見を受け入れること」という意味になります。
なお、「包容」の類義語は、「寛容」「許容」「寛大」「容認」などが挙げられ、「包容」は「異なる価値観を包容できる社会が理想です」「彼の包容力が、チームの団結を生んだ」「包容力がある人は、多くの人と円滑な関係を築ける」のように使われます。
「包容」は上述のように、包み入れることや包み込んでいることの意味から、広い心で相手を受け入れ、人の間違いや欠点を許すという意味合いで用いられ、物事や相手を包み込む心や受け入れる優しさを表しています。
さらに「包容」は、おおらかな心で、自分と反対意見を持つ人、時には自分の悪口を言う人などとも、承知の上でつきあうことを指し、相手の考え・価値観・文化などを許容し、受け入れる姿勢を表します。
「抱擁」
「抱擁」は、「愛情を込めて抱きしめること」や「抱きしめて愛撫すること」という意味を持ちます。
「抱擁」の「抱」は、「抱く」「両手でかかえる」「心の中に思いを抱く」という意味があり、「擁」は、「いだく」「かかえる」「まもる」という意味があります。
したがって「抱擁」は、「抱きかかえること」すなわち「愛情を込めて抱きしめること」という意味になります。
なお「抱擁」の類義語は、「抱く」「抱え込む」「懐抱(かいほう)」などがあり、「抱擁」は、「再開した家族と感動の抱擁を交わした」「彼女の温かい抱擁に、安心感が込み上げてきた」「別れ際の抱擁が、二人の絆の深さを物語る」のように使われます。
「抱擁」は、人を腕で抱きしめるという、愛情や親しみを込めた行為であり、物理的な行動として、しっかりと抱きかかえることや愛撫することから、親密な関係を持つ同士で行われるのが特徴です。
さらに「抱擁」という行為は、単に体を密着させることだけでなく、深い情愛や感情を含んでおり、親しみや愛情、時には慰めや支えを伝える手段として用いられます。
以上のように「包容」は、「心が大きく、他人や他人の意見を受け入れること」という意味を持ち、相手の欠点や過ちなどを含め、相手を受け入れ包み込む心の広さを表します。
一方「抱擁」は、「愛情を込めて抱きしめること」という意味を持ち、物理的に体を抱きしめる行為により、慰めや支えを伝えるなど、親愛の気持ちを態度で表します。
記事の参考文献
- 偏 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版,三省堂.
- 偏 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之(2011)『新明解国語辞典』第七版,三省堂.
- 編著 北原保雄(2010)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
- 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2025年2月23日).
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2025年2月23日).
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
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