「異動」「移動」の意味と違い
誰もが一度は直面したことがあるであろう「異動」と「移動」の使い分け問題。会話をするシーンでは、前後の文脈から言葉の意味を推測するので不便はありません。しかし文書を書く際に、どちらを使う方が適切なのか、使い分けに困った経験のある人もいるかもしれません。日常の様々なシーンでよく使う表現なので、正しい使い方を確認しておきましょう。
本記事では「異動」と「移動」の意味と違い、用例などを解説していきます。同じ「いどう」という読み方ですが、意味と使い方が若干異なるため、文脈に応じて使い分けることが大切です。ぜひマスターし、自信を持って使えるようになりましょう。
「異動」
「異動」は「地位・職務が変わること」「転・退任などの人事の動き」という意味を持ちます。「彼は東京本社に異動になった」「4月から新しい部署への異動が決まった」「定期的な人事異動」のように使われます。
なお「異動」は「物事に、前の状態と違った動きが起こること」という意味や、「住所が変更すること」という意味も、馴染みは少ないかもしれませんがあります。そのため住民票も移す場合は、「異動」を使います。
ただ「異動」は主に人事異動、部署異動、転勤など、組織内での人材配置の変更を指す意味が一般的です。下述する「移動」と比較すると、やや狭い範囲で使用され、主にビジネスや組織に関しての文脈で使われる言葉になります。
「移動」
「移動」は「位置を変えること」「移り動くこと」「移り動かすこと」という意味を持ちます。「荷物を持って移動する」「東京から大阪への移動手段を考える」などのように使われます。
「移動」の「移」は訓読みで「うつる」「うつす」と読み、「移る」「場所、位置が変わる」「動かす」という意味を持ちます。「動」は上述したとおり、「うごく」「うごかす」と読み、言葉どおり「動く」「動かす」「動き」という意味を持ちます。したがって「移動」は「位置を変える、移り動く」という意味になります。
「移動」は物や人がある場所から別の場所へ動くことを指します。上述した「異動」は主に人を対象とした言葉ですが、「移動」は人、物、動物など、あらゆるものが対象となります。
このように、「異動」「移動」はどちらも場所や状態が変わることを意味する言葉ですが、ニュアンスが異なります。組織の中で役職が変わることや人事の動きを「異動」、物や人の場所が変わることを「移動」と使い分けることが可能です。
記事の参考文献
- 編 藤堂 明保・松本 昭・竹田 晃・加納 喜光・ (2001)『漢字源』改訂新版, Gakken.
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.『漢字ペディア』.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年9月22日).
- 編 新村 出 (2008)『広辞苑』第六版, 岩波書店.
- 編 沖森 卓也・中村 幸弘(2015).『ベネッセ表現読解国語辞典』
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
- 小学館.『デジタル大辞泉』. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年9月22日).
- 編 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之 (2011)『新明解国語辞典』第七版, 三省堂.
コメントを残す