「偉業」「遺業」の意味と違い

「偉業」「遺業」の意味と違い

「偉業」「遺業」の意味と違い

字面が似ており、読みも同じ言葉に「偉業」と「遺業」があります。会話をするシーンでは、前後の文脈から言葉の意味を推測するので不便はありません。しかし文書を書く際に、どちらを使う方が適切なのか、判断に迷ったことがあるのではないでしょうか。

本記事では「偉業」「遺業」の意味と違い、用例などを深掘りしていきます。同じ「いぎょう」という読み方ですが、意味と使い方が異なるため、文脈に応じて使い分けることが重要です。ぜひ参考にしてみてください。

「偉業」

偉業

「偉業」とは、「人から賞賛されるような仕事」や「非常に優れている業績」さらには「歴史に残るほどの目覚ましい成果」や「すばらしい功績」を意味します。「偉業を成し遂げた選手たち」「彼の偉業に敬意を表したい」「偉業を達成する」などのように使われます。

「偉業」の「偉」は、訓読みで「えらい」と読みますが、言葉通り「立派な」「優れている」といった意味を持ちます。「業」は「わざ」「おこない」「仕事」「つとめ」といった意味を持つので、「偉業」は「立派な仕事」という意味になります。

偉業の類語として「功績」「功」「手柄」「偉烈」などがあります。

「偉業」と「遺業」は非常によく似た言葉で、どちらも人の功績に関する言葉ですが、「偉業」の方が日常的に使われることが多くあります。一方「遺業」は、下述しますが、やや限られた場面で使われます。

「遺業」

遺業

「遺業」とは、「故人がこの世に残した仕事や事業」を意味します。ここでの仕事、事業は必ずしも成し遂げられたことに限定しないため、故人がやりかけたもの、未完成のもの、死後も継続されるものに対しても使われます。「先代の遺業を引き継ぎ、会社を発展させた」「彼の遺業は、今もなお多くの人々に影響を与えている」などのように使います。

「遺業」の「遺」は「のこす」「のこる」「すてる」「おくる」という意味があります。「業」は上述のように「わざ」「おこない」「仕事」「つとめ」といった意味を持つので、「遺業」は「のこした仕事」という意味になります。

遺業の類語として「足跡」「業績」「事績」などがあります。

大きな違いは、「偉業」は生前に成し遂げた「偉大な功績」を指し、「遺業」は「故人の残した事業や仕事」を総称して表現するというところにあります。特定の業績がどれほど偉大か強調したい場合は「偉業」、死者の業績を表現したい場合は「遺業」という使い分けができます。

記事の参考文献

  • 編 藤堂明保・松本 昭・竹田 晃・加納 喜光・ (2001)『漢字源』改訂新版, Gakken.
  • 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年8月7日).
  • 編 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版.三省堂.

  • 編 新村出 (2008)『広辞苑』第六版, 岩波書店.
  • 編著 北原保雄 (2010)明鏡国語辞典』第二版, 大修館書店

  • 編  一般社団法人共同通信社  (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
北澤篤史サイト運営者
1984年、大阪府生まれ。 著書 『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(講談社、2024) ことわざ学会所属。ことわざ研究発表『WEB上でのことわざ探求:人々が何を知りたいのか』(ことわざ学会フォーラム、2023)