「違反」「違犯」の意味と違い
字面が似ており、読みも同じ言葉に「違反」と「違犯」があります。会話をするシーンでは、前後の文脈から言葉の意味を推測するので不便はありません。しかし文書を書く際に、どちらを使う方が適切なのか、判断に迷ったことがあるのではないでしょうか。
本記事では「違反」「違犯」の意味と違い、用例などを深掘りしていきます。同じ「いはん」という読み方ですが、意味と使い方が微妙に異なるため、文脈に応じて使い分けることが重要です。ぜひ参考にしてみてください。
「違反」
「違反」は「法律、規則、約束、ルールなどに従わない行為全般」を指します。反則、違背、侵害と言い換えることもできます。
「法令違反」「校則に違反する」「会社の規則を違反した」などのように使います。
「違反」の「違」は訓読みで「ちがう」「たがう」と読み「食いちがう」「従わない」「背く」という意味を持ちます。一方「反」は「逆のことをする」「対立する」「背く」という意味を持ちます。よって「違反」は、似た意味を持つ漢字を重ねた熟語で「(法律に)背く」という意味になります。
「違反」は日常的に使用される言葉で、規則の違反、交通違反、契約違反など日常生活やビジネスの場面で幅広く使われます。一方、下述する「違犯」は現代ではほとんど使われない言葉になります。
「違犯」
「違犯」は、「犯罪行為」や「刑事事件における法の違反行為」を指します。特に、刑法や刑事事件に関連した文脈で使われることがありますが、現代ではあまり一般的には使われません。「違反」と比較して、より硬い表現となり、法律や公的な規則に対して使われます。
「違犯行為をした」「法令違犯」「刑法違犯」などのように使われます。
「違犯」の「違」は上述したように、「食いちがう」「従わない」「背く」という意味を持ちます。「犯」は訓読みで「おかす」と読み、「規則・戒律を破る」という意味を持つため、「違犯」は「(より厳格に)規則や法律に背く」という意味になります。
「違反」と「違犯」は、どちらも法律や規則に反することを表しますが、ニュアンスや使われ方に違いがあります。より一般的な日常会話やビジネスの場面では「違反」を使用することがほとんどで、「違犯」は一部の法律関連の文書や専門的な場面での使用に限られます。
新聞紙面では「違犯」という字は使用されず「違反」に統一されており、迷った際には「違反」を使用した方が無難です。
記事の参考文献
- 編 藤堂 明保・松本 昭・竹田 晃・加納 喜光・ (2001)『漢字源』改訂新版, Gakken.
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年8月20日).
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編 松村 明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版.三省堂.
- 編 新村 出 (2008)『広辞苑』第六版, 岩波書店.
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編著 北原 保雄 (2010)『明鏡国語辞典』第二版, 大修館書店
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
- 編 沖森 卓也・中村 幸弘(2015).『ベネッセ表現読解国語辞典』
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