「異常」「異状」の意味と違い
「異常」と「異状」。これらは同じ読み方でも意味が異なる「同音異義語」です。他にも「移動・異動」や「意志・意思」などがあります。これらは意味を混同しやすく、文章を書く際に、どちらを使うべきか頭を悩ませた経験があるかもしれません。
本記事では、「異常」と「異状」の意味や使い分けについて解説していきます。違いを理解し、ぜひ自信を持って使い分けられるようになりましょう。
「異常」
「異常」は、「正常」の対義語で、普段や普通と違うこと、いつもと違ってることを指し、並外れたところがあること、またそのさまを表します。「発育異常」「異常に緊張する」「この夏は異常な暑さだ」などのように使われます。
「常」は「つね」と読み、「いつも」「つねづね」 「普通」という意味を持ちます。一方「異」は「ことなる」「別の」といった意味があり、「異常」は「普通と異なる」と意味を表します。
「異常」は後述する「異状」と違い、名詞としても形容動詞としても使うことができるため、より広い場面で使われます。「いつも」と「違う」と書くように、普段との違いに重点を置く場合は「異常」が用いられます。
「異状」
「異状」は「異常」な状態、普段と違った状態、普通ではない状態、を示す言葉です。一見、「異常」の意味と同じように思われますが、こちらは特に普通と異なる「状態」の方に重きが置かれています。「体に異状をきたす」「全員異状なし」などのように、普段と違う「状態」を強調したい場合に使われます。
「状」は「すがた」「ようす」「ありさま」を表し、「形状」「状況」「現状」などの熟語に用いられます。
「異状」は前述した「異常」に対して、より具体的な「すがた」「ようす」を指すため、より限定的に使われます。主に名詞として使われ、形容詞的な用法はできません。
このように、「異常」と「異状」は どちらも「普通ではないこと」の意味合いを持つ言葉ですが、微妙なニュアンスの違いがあり、使い分けることができます。「異常」の方がより広く使われ、「異状」は特に限られた様子を表す際にしか用いられません。
なお新聞においては、「異状」は限定用語として用いられ、「異状死」「異状死体」「西部戦線異状なし(レマルクの小説)」以外では使われません。
そのため「異常」と「異状」の使い方に迷った場合は、基本的には「異常」を使えば、間違いはありません。
記事の参考文献
- 編 藤堂明保・松本 昭・竹田 晃・加納 喜光・ (2001)『漢字源』改訂新版, Gakken.
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年8月3日).
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編 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版.三省堂.
- 編 新村出 (2008)『広辞苑』第六版, 岩波書店.
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編著 北原保雄 (2010)明鏡国語辞典』第二版, 大修館書店
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
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