「移譲」「委譲」の意味と違い
「移譲」と「委譲」は同じ読み方で意味も混同しやすい言葉です。使い分けに困った経験のある人もいるかもしれませんが、この2つには違いがあります。日常の様々なシーンでよく使われる表現なので、正しい使い方を確認しておきましょう。
本記事では「移譲」と「委譲」の違いについて解説していきます。 ぜひマスターし、自信を持って使えるようになりましょう。
「移譲」
「移譲」は「ほかに移し譲ること」という意味を持ちます。権利や権限、財産などを他の人や組織に譲り移すことを指します。「所有権の移譲を行う」「子どもに土地を移譲する」「移譲の手続きをする」などのように使われます。
「移譲」の「移」は訓読みで「うつす」「うつる」と読み、「うつす」「動かす」「かえる」という意味を持ちます。「譲」は訓読みで「ゆずる」と読み、「ゆずる」「ゆずりあたえる」という意味を持ちます。したがって「移譲」は「ゆずりうつす」という意味になります。
「移譲」は行政や法律の分野でよく使用される言葉になります。また対等な立場の間で行われるものに関しては「移譲」が使用されます。これに対し「委譲」の場合は、後述するように二者の間に上下関係が存在するのが通常です。
「委譲」
「委譲」は「権限などを他にまかせて譲ること」という意味を持ちます。権利や権限などを、他の人や機関に譲り渡して任せることを指します。「上司から部下への業務の権限委譲」「執行権を委譲する」「管理権限を委譲する」などのように使われます。
「委譲」の「委」は訓読みで「ゆだねる」「まかせる」と読み、「ゆだねる」「まかせる」という意味を持ちます。「譲」は上述したとおり、訓読みで「ゆずる」と読み、「ゆずる」「ゆずりあたえる」という意味を持ちます。したがって「委譲」は「ゆずりゆだねる」という意味になります。
「委譲」はビジネスや組織管理の文脈でよく使用される言葉になります。また、上述したとおり、上の者が下の者に対して権限などを委ねることを指す場合に使用されます。
このように、「移譲」「委譲」は同じ「いじょう」と読みますが、ニュアンスが異なります。「移譲」は「他に譲り移すこと」、「委譲」は「他に譲り委ねること」と使い分けることができます。判断が難しい場合もありますが、行政関係では「移譲」が使われると覚えておくと便利です。
記事の参考文献
- 編 藤堂 明保・松本 昭・竹田 晃・加納 喜光・ (2001)『漢字源』改訂新版, Gakken.
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.『漢字ペディア』.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年9月28日).
- 編 新村 出 (2008)『広辞苑』第六版, 岩波書店.
- 編 沖森 卓也・中村 幸弘(2015).『ベネッセ表現読解国語辞典』
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
- 小学館.『デジタル大辞泉』. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年9月28日).
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