「異郷」「異境」の意味と違い
「異郷」と「異境」。これらは同じ読み方の「同音異義語」ですが、若干ニュアンスが異なる言葉になります。このような言葉は、他にも「移動・異動」や「意志・意思」などがあります。これらは意味を混同しやすく、文章を書く際に、どちらを使うべきか頭を悩ませた経験があるかもしれません。
本記事では、「異郷」と「異境」の意味や使い分けについて解説していきます。違いを理解し、ぜひ自信を持って使い分けられるようになりましょう。
「異郷」
「異郷」は「自分の故国や郷里から遠く離れた場所」「他の国」「外国」を意味します。他郷、異国、他国、見知らぬ土地と言い換えることができます。「異郷に骨を埋める決意をした」「異郷の地で故郷を懐かしんだ」「私はこの旅により異郷の文化に触れ、新たな発見をした」などのように使われます。
「異郷」の「異」は訓読みで「ことなる」と読み、言葉どおり「ことなる」「ことにする」「別の」「他の」という意味を持ちます。「郷」は訓読みで「さと」と読み、「ふるさと」「生まれたところ」「場所」「さと」という意味を持ちます。したがって「異郷」は「ふるさととは別の場所」という意味になります。
「異郷」は特に「故郷を離れた場所」という意味合いが強く、故郷とは違う、馴染みのない場所、違った文化を持つ場所というニュアンスを含んでいます。一方「異境」も似たような意味を持つ言葉ですが、若干ニュアンスが異なります。
「異境」
「異境」は「故国を遠く離れたよその国」「他郷」「異なる環境や状況」という意味を持ちます。よその国、外国、他国と言い換えることができます。「この場所はまるで異境のようだ」「未知の異境を探検する」「極寒の異境で、生命の強さを感じる」などのように使われます。
「異境」の「異」は上述したとおり、訓読みで「ことなる」と読み、「ことなる」「ことにする」「別の」「他の」という意味を持ちます。「境」は訓読みで「さかい」と読み、「さかい」「くぎりめ」「土地」「場所」という意味を持ちます。したがって「異境」は「異なる土地・場所」という意味になります。
「異郷」と似た意味を持ちますが、「異境」はより広い意味で、環境や状況の違いを強調する言葉になります。未知の世界、あるいは非日常的な場所や状況を表現する際に使われます。
「異郷」と「異境」はどちらも「自分が慣れない、見知らぬ場所」を指しますが、ニュアンスが異なります。「異郷」は主に人間社会や文化的な違いを強調し、「異境」は地理的、環境的条件の違いを強調する際に使われます。文脈によって、適切な言葉を選択することが大切です。
記事の参考文献
- 編 藤堂 明保・松本 昭・竹田 晃・加納 喜光・ (2001)『漢字源』改訂新版, Gakken.
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年8月28日).
- 編 新村 出 (2008)『広辞苑』第六版, 岩波書店.
- 編 沖森 卓也・中村 幸弘(2015).『ベネッセ表現読解国語辞典』
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
- 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年8月29日).
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