「印影」「陰影」の意味と違い
字面が似ており、読みも同じ言葉に「印影」と「陰影」があります。会話をするシーンでは、前後の文脈から言葉の意味を推測するので不便はありません。しかし文書を書く際に、どちらを使う方が適切なのか、判断に迷ったことがあるのではないでしょうか。
本記事では「印影」「陰影」の意味と違い、用例などを深掘りしていきます。同じ「いんえい」という読み方ですが、意味と使い方が異なるため、文脈に応じて使い分けることが重要です。ぜひ参考にしてみてください。
「印影」
「印影」は「印鑑や印章を押した際に紙などに残る跡のこと」を指す言葉です。印判、印顆、極印と言い換えることもできます。「印影が鮮明でないため、再度押印をお願いします」「契約書の印影を確認する」「契約書に印影を押す 」などのように使われます。
「印影」の「印」は訓読みで「しるし」と読み「はんこ」「しるし」「しるす」という意味を持ちます。「影」は訓読みで「かげ」と読み、「物の姿」「物の形」「写しとったもの」「かげ」という意味を持ちます。したがって「印影」は「はんこを写しとったもの・はんこの跡」という意味になります。
「印影」は主にビジネス、法律、文書管理など公式な書類や印鑑を使用する場面で使われます。一方、「陰影」は全く異なる概念を表す言葉であり、使用される文脈も大きく異なります。
「陰影」
「陰影」は「光が当たってできる影」「明暗の差によって生じる立体感」を指す言葉です。また、「人物の性格や感情の微妙なニュアンス」を指す場合もあります。影、明暗、濃淡、立体感と言い換えることもできます。「木漏れ日により、地面に陰影ができていた」「絵画に陰影をつける」「彼女の演技には陰影があって魅力的だ」などのように使われます。
「陰影」の「陰」は訓読みで「かげ」と読み、言葉どおり「かげ」「日かげ」「物におおわれているところ」という意味を持ちます。「影」は上述した通り、「物の姿」「物の形」「写しとったもの」「かげ」という意味を持ちます。したがって「陰影」は、似たような意味の漢字を組み合わて「かげ」を意味する熟語になります。
「陰影」は芸術、写真、デザインなど芸術分野や視覚的表現の場面で使われます。また、人の感情や性格など比喩的に深みや複雑さを表す際に使われる場合もあります。
このように、「印影」と「陰影」はどちらも「影」という漢字を使った熟語になりますが、意味が異なるため使用される文脈も違ってきます。印章を押した跡を指す場合は「印影」、光によってできる影や立体感を指す場合は「陰影」と使い分けることができます。
記事の参考文献
- 編 藤堂 明保・松本 昭・竹田 晃・加納 喜光・ (2001)『漢字源』改訂新版, Gakken.
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.『漢字ペディア』.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年9月1日).
- 編 新村 出 (2008)『広辞苑』第六版, 岩波書店.
- 編 沖森 卓也・中村 幸弘(2015).『ベネッセ表現読解国語辞典』
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
- 小学館.『デジタル大辞泉』. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年9月1日).
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