「衣料」「衣糧」の意味と違い

「衣料」「衣糧」の意味と違い

「衣料」「衣糧」の意味と違い

「衣料」と「衣糧」は、日常のさまざまなシーンで登場する同音異義語です。しかし、いずれも漠然とした意味合いは知っているものの、詳しい意味や使い分けを説明するとなると、意外に難しいことに気づきます。これらの言葉には、どのような違いがあるのでしょうか。

本記事では「衣料」「衣糧」の意味や違いについて、例文を交えながら詳しく解説していきます。紛らわしい言葉ですが、使い分けることができると表現の幅が広がります。ぜひ参考にしてみてください。

「衣料」

衣料

「衣料」は、「衣服や布製品など、身につけるための物」を指します。一般には、衣服そのものを指す場合が多いですが、「衣服の材料である布地」を指すこともあります。衣装、洋服、被服、着物などと言い換えることができます。「婦人用の衣料品のセール期間」「冬の衣料品を買いに行く」「災害時に必要な衣料を確保する」などのように使われます。

「衣料」の「衣」は訓読みで「ころも」「きぬ」と読み、「身にまとうもの」「着物」「外側にかぶせるもの」という意味を持ちます。また「料」は「あることのために使うもの」「もとになるもの」「たね」という意味を持つので、「衣料」は「身にまとうためのもの・着るためのもの」という意味になります。

「衣料」と「衣糧」はどちらも「衣」という字を使っており、一見似ているようですが、違ったニュアンスの熟語になります。「衣料」は日常生活の幅広い場面で使われます。一方、下述する「衣糧」は現代ではあまり使われない言葉となっています。

「衣糧」

衣糧

「衣糧」とは、衣類と食料、両方を指す言葉です。基本的な生活に必要なものとしての「衣食」を表します。「衣糧不足が問題となっている」「衣糧の確保が課題」「限られた衣糧で生き延びる」などのように使われます。

「衣糧」の「衣」は、上述した通り、訓読みで「ころも」「きぬ」と読み、「身にまとうもの」「着物」「外側にかぶせるもの」という意味を持ちます。また「糧」は訓読みで「かて」と読み、言葉どおり「かて」や「食品」「食べ物」「旅行などの際に携行する食べ物」という意味を持ちます。したがって、「衣糧」は「着る物と食べ物」という意味になります。

「衣糧」はやや古めかしい表現で、現代では使用頻度が低くなっています。ただし、「衣食住」という言葉の「衣」と「食」を合わせた概念として、時折使用されることがあります。

「衣料」と「衣糧」は、どちらも「衣」に関する言葉ですが、意味が異なります。「着る物」「衣服」を指す場合は「衣料」、より広い範囲で「着物と食べ物」を指す場合は「衣糧」と使い分けることができます。現代の日常会話では「衣料」が一般的に使われ、「衣糧」は歴史的・古典的文献や文学的内容などの一部で使われる言葉となります。

記事の参考文献

  • 編 藤堂 明保・松本 昭・竹田 晃・加納 喜光・ (2001)『漢字源』改訂新版, Gakken.
  • 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年8月25日).
  • 編 新村 出 (2008)『広辞苑』第六版, 岩波書店.
  • 編 沖森 卓也・中村 幸弘(2015).『ベネッセ表現読解国語辞典』
北澤篤史サイト運営者
1984年、大阪府生まれ。 著書 『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(講談社、2024) ことわざ学会所属。ことわざ研究発表『WEB上でのことわざ探求:人々が何を知りたいのか』(ことわざ学会フォーラム、2023)