「一切」「一再」の意味と違い
「一切」と「一再」という言葉は読み方は同じですが、意味がそれぞれ違う同音異義語です。
「一切」も「一再」も、それぞれ「ならず」を付けて「一切ならず」「一再ならず」という言葉として使うことがあります。この場合、まったく逆の意味を持つことになりますので注意が必要です。
そこで、今回は「一切」と「一再」、それぞれの意味について解説したいと思います。
「一切」
「一切」は、「全部、すべて残らず」という意味を持ちます。「この会の一切を取り仕切る」というと、「この会のすべてを取り仕切る」という意味になりますし、「一切を失った」というと、「すべてを失った」という意味になります。
もともと「切」という漢字には「切る」という意味のほかに「すべて」という意味もあるので、「一切」は、「全部、すべて残らず」という意味を持ち、「合」を合わせた「合切」という言葉も「すべて」を表します。
そして、「一切」の下に打ち消しの言葉をつけると「まったく、全然」という意味になります。たとえば、「彼女の事情は一切知らない」というと「彼女の事情はまったく知らない」という意味になるのです。
また、「一切」に「ならず」を付けて「一切ならず」と表現することもありますが、これは「すべて」を意味する「一切」に否定の「ならず」が付くことで「まったく無い」という意味になります。
「一再」
「一再」は「一、二度」や「一、二回」という意味を持ちます。たとえば、「彼女に怒られたのは一再ではない」というと、「怒られたのは一度や二度ではない」という意味になります。
また、「一切」と同じように「一再」にも否定の「ならず」を付けて「一再ならず」と表現することがあります。「一再ならず」というと、「一度や二度ではない」という意味になります。「システムエラーが一再ならず発生している」というと、「エラーが頻繁に起こっている」という意味になります。
同じ読みでも「一切ならず」は「まったく起こらない」、「一再ならず」は「頻繁に起こる」と逆の意味になりますので、耳で聞いて判断するときは、状況を見ながら判断する必要があります。
記事の参考文献
- 編 金田一京助 編集代表 深谷圭助(2015) 『例解学習 国語辞典』第十版 小学館
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年8月26日).
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
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編 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版.三省堂.
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編著 北原保雄 (2010)『明鏡国語辞典』第二版, 大修館書店
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編 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之 (2011)『新明解国語辞典』第七版, 三省堂.
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