「威徳」「遺徳」の意味と違い
「威徳」と「遺徳」は同じ読み方で、どちらも「徳」という字を使っているため、混同しやすい言葉です。使い分けに困った経験のある人もいるかもしれませんが、この2つには明確な違いがあります。日常の様々なシーンでよく使う表現なので、正しい使い方を確認しておきましょう。
本記事では「威徳」と「遺徳」のニュアンスの違いや使い分け方について解説していきます。ぜひマスターし、自信を持って使えるようになりましょう。
「威徳」
「威徳」は「威厳と人徳を兼ね備えていること」「威厳や尊敬を伴う徳」「厳かで人から慕われる徳」という意味を持ちます。「その王は、民衆から深い尊敬を集める威徳を備えている」「リーダーの威徳により組織が一つにまとまった」などのように使われます。
「威徳」の「威」は「人を恐れさせる力」「おごそかな」「いかめしい」「おびやかす」という意味を持ちます。「徳」は「立派な行い」「品性」「すぐれた人格者」「恩恵」という意味を持ちます。したがって「威徳」は「おごそかで徳が高い」という意味になります。
「威徳」と「遺徳」はどちらも、その人の人格や行動が人々に与えた深い影響を表す言葉です。「威徳」は生きている人物、特に権力者や指導者に対して使われる言葉です。一方、「遺徳」は下述しますが、故人に対して使われる言葉になります。
「遺徳」
「遺徳」は「死んだ人が残した徳」「後世に残る恩徳」「亡くなった人の良い行いや教え」という意味を持ちます。「遺徳をたたえて、記念式典が行われた」「先代の遺徳を偲ぶ会が行われた」「彼の遺徳は現在も多くの人々に影響を与えている」などのように使われます。
「遺徳」の「遺」は「残る」「死後に残す」「置き忘れる」という意味を持ちます。「徳」は上述したとおり「立派な行い」「品性」「すぐれた人格者」「恩恵」という意味を持ちます。したがって「遺徳」は「(故人が)残した徳・恩恵」という意味になります。
「遺徳」は亡くなった人の品性や善行をしのび、故人に対して敬意を表するときに使われます。
このように「威徳」「遺徳」はどちらも「いとく」と読みますが、「威徳」は威厳や尊敬を伴った徳で、生きている人が持つ力や品格を指します。「遺徳」は故人が生前に示した徳や功績で、亡くなった後に評価され、感謝されるものを指します。文脈によって、適切な言葉を選択することが大切です。
記事の参考文献
- 編 藤堂 明保・松本 昭・竹田 晃・加納 喜光・ (2001)『漢字源』改訂新版, Gakken.
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.『漢字ペディア』.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年8月28日).
- 編 新村 出 (2008)『広辞苑』第六版, 岩波書店.
- 編 沖森 卓也・中村 幸弘(2015).『ベネッセ表現読解国語辞典』
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
- 小学館.『デジタル大辞泉』. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年8月29日).
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