「自愛」と「慈愛」の意味と違い

「自愛」と「慈愛」の意味と違い

「自愛」と「慈愛」の意味と違い

自愛」と「慈愛」は、同じ読み方でも意味が異なる同音異義語です。

そのニュアンスや使い方には微妙な違いがあるので、混同しないようにそれぞれの意味をしっかりと把握しましょう。

本記事ではその「自愛」と「慈愛」の意味と違いを深掘りし、用例などを通じて、使い分けのポイントについて解説していきます。

紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がりますので、ぜひ参考にしてみてください。

「自愛」

「自愛」とは

自愛」は「自分の身体を大切にすること」「自分の健康状態に気をつけること」という意味を持ちます。

自愛」の「自」は「おのれ」「われ」「じぶんひとりで」という意味があり、「愛」は「あいする」「いつくしむ」「好む」という意味があります。

したがって「自愛」は、「おのれをめでる」すなわち「自分の身体を大切にすること」という意味になります。

自愛」は「どうぞご自愛ください」「時節柄ご自愛ください」「ご自愛の上、良い一年をお過ごしください」のように用いられ、「自愛」の対義語には「他愛」「自虐」などが挙げられます。

このように、「自愛」は、「自分自身を大切にする」という意味を表す言葉です。

例文のように、「ご自愛ください(お身体を大切にしてください)」といった表現を手紙やメールの結びの言葉として、相手の身体や健康を気遣う目的で使われます。

なお、「どうぞお身体をご自愛ください」といった使い方をする人もいますが、「ご自愛ください」の中に「身体を」という意味が含まれているため、意味が重複してしまい誤用となる点に注意が必要です。

「慈愛」

「慈愛」とは

慈愛」は、「いつくしみ愛すること」「親がわが子をいつくしむような深い愛」という意味を持ちます。

慈愛」の「慈」は「いつくしむ」「かわいがる」「めぐむ」という意味があり、「愛」は上述の通り「あいする」「いつくしむ」「好む」という意味があります。

したがって「慈愛」は、「いつくしみ愛すること」という意味になります。

慈愛」は「彼女は慈愛に満ちた表情をしている」「慈愛のまなざしが赤ちゃんに向けられていた」「わが子を見つめる彼女の目は慈愛に満ちていた」のように用いられ、「慈愛」の類義語には「愛情」「恩愛」「慈悲」などが挙げられます。

このように「慈愛」は、相手への深い愛情を指す言葉で、相手への優しさや労りの気持ちを表す時に使われます。

なお、「ご自愛ください」と違い、「ご慈愛ください」という使い方はほとんどされません。

また「ご慈愛ください」は「あなたの深い愛情を私にください」という意味になるので、「ご自愛ください(お身体を大切にしてください)」とは全く異なる意味になる点に注意が必要です。

以上のように「自愛」は、「自分の身体を大切にすること」という意味があり、「ご自愛ください(お身体を大切にしてください)」といった表現を手紙やメールの結びの言葉として、相手の身体や健康を気遣う目的で使われます。

一方「慈愛」は「いつくしみ愛すること」という意味があり、相手へのやさしさやいたわりの気持ちを表す時に使われます。

記事の参考文献

  • 編 山田忠雄、柴田武、酒井憲二、倉持保男、山田明雄、上野善道、井島正博、笹原宏之 (2012)『新明解国語辞典』第七版, 三省堂.
  • 著 北原 保雄(2011-2019)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
  • 編 新村出 (2018,2019)『広辞苑』第七版, 岩波書店.
  • 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2025年3月12日).
  • 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2025年3月12日).
  • 編  一般社団法人共同通信社  (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.



北澤篤史サイト責任者

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