「人口」「人工」の意味と違い

「人口」「人工」の意味と違い

「人口」「人工」の意味と違い

人口」と「人工」は、同じ読み方でも意味が異なる同音異義語です。日常生活やビジネスシーンなどで多く使われていますが、どのような違いがあるのでしょうか。

本記事ではその「人口」と「人工」の意味と違いを深掘りし、用例などを通じて、使い分けのポイントについて解説していきます。

紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がります。ぜひ参考にしてみてください。

「人口」

「人口」

人口」は、「人の数、ある地域に住んでいる人の数」「ある観点から分類された同じ領域に属すると捉えられる人間の数」「人のうわさ」という意味を持ちます。

人口」の類義語としては、「頭数」「員数」「個数」などがあります。

人口」の「人」は、「ひと、人間」「ある職や分野に属する人」の意味を持ち、「口」は、「人や家の数」「口に出す、口ぶり」という意味を持ちます。

したがって「人口」は、「人の数」すなわち「ある地域に住んでいる人の数」という意味になり、一定地域内で暮らす住民の数を指し、対象は現在生きている人間だけです。

「日本の人口は、減少傾向に転じました」「人口問題への対策が急務です」のように使われます。

一定地域内に住む人だけでなく、何かを行う集団に属する人間の数についても用いられ、「中高年の登山人口が、増加している」「農業人口は、今後も減少する見込みです」のようにも使われます。

地球規模から小さな範囲まで、様々な区分による人の数を表すことができます。

また「人口」には、「口」に「口に出す、口ぶり」という意味があることから、「人が口に出す」すなわち「人のうわさ・世間の評判」という意味もあります。

「人工」

「人工」

人工」は、「人が作り出すこと」「自然のものに人の手を加えること」という意味を持ちます。

人工」の類義語としては「加工」「人造」などが挙げられ、対義語としては「自然」「天然」などがあります。

「この湖は人工的に作られたもので、唯一の観光資源となっている」「この小さな町工場は、人工衛星の部品を製造している」「人工知能は様々な分野で利用されている」のように使われます。

人工」の「人」は上述のとおり「ひと、人間」の意味を持ち、「工」は「物を作る」「しごと」「物を作る人」という意味を持ちます。

したがって「人工」は、「人が作り出すこと」すなわち「自然のものに人の手を加えること」という意味になります。

人工ダイヤモンドや人工着色料など、人間の手で自然と同じような人工物を作り出すことを意味します。人工的に雨を降らせるなど、自然と同じような現象を起こさせることも含まれます。

人の手によって作り出された人工物は、技術の進歩により、科学や建築、医療などの分野で広く活用されています。

以上のように人口は、「人の数」つまり、主に人に関連する話題で使われ、人そのものを対象としています。

一方人工は、「人の手で作るもの」すなわち、人間が作り出した人工物や技術に関連する話題で使われ、物や技術などを対象としています。

記事の参考文献

  • 偏 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版,三省堂.
  • 偏 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之(2011)『新明解国語辞典』第七版,三省堂.
  • 編著 北原保雄(2010)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
  • 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年11月25日).
  • 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年11月25日).
  • 編  一般社団法人共同通信社  (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
北澤篤史サイト運営者
1984年、大阪府生まれ。 著書 『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(講談社、2024) ことわざ学会所属。ことわざ研究発表『WEB上でのことわざ探求:人々が何を知りたいのか』(ことわざ学会フォーラム、2023)