「実体」「実態」の意味と違い
「実体」と「実態」は、同じ読み方でも意味が異なる同音異義語です。そのニュアンスや使い方には微妙な違いがあります。混同しないようにそれぞれの意味をしっかりと把握しましょう。
本記事ではその「実体」と「実態」の意味と違いを深掘りし、用例などを通じて、使い分けのポイントについて解説していきます。
紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がります。ぜひ参考にしてみてください。
「実体」
「実体」は「事物の本体」「物事の奥にひそむ真の姿」や「変化する性質の基盤をなす普遍的なもの」という意味を持ちます。
「実体」の類義語としては、「本質」「本体」「実質」「正体」などが挙げられます。
「実体」の「実」は「まこと」「本当」「ありのまま」の意味を持ち、「体」は「からだ」「もの」「おおもと、もとになる」という意味を持ちます。
したがって「実体」は、「その物の本当の姿」すなわち「物事の奥にひそむ真の姿」という意味を持ちます。
「希少生物の実体を見てみたい」「実体のない架空会社に騙される」「未確認飛行物体の実体は未だ解明されていない」のように使われます。
表面上では分からない、分かりにくい、そのものの奥に秘められた本来の姿や形、本質を表す場合に用いられます。
また、「実体」は哲学用語として「変化する性質の基盤をなす普遍的なもの」すなわち「変化しやすい多様なものの根底にある本質的なもの」という意味で使われます。
さらに「実体」は「じってい」と読むこともあり、「じってい」と読むと、「まじめで正直なこと」という意味に変わります。
「実態」
「実態」は、「実際のありさま・状態」「(表面からはわかりにくい)実際のありさま・ありのままの状態」という意味を持ちます。
「実態」の類義語としては、「実情・実状」「実況」「真相」などが挙げられます。
「実態」の「実」は、上述のとおり「本当」「ありのまま」の意味を持ち、「態」は「さま」「ようす」「ありさま」という意味を持ちます。
したがって「実態」は、「本当のありさま」すなわち「(表面からはわかりにくい)実際のありさま・ありのままの状態」という意味になります。
「いじめの実態を知らなかった教師の責任は大きい」「子どもの貧困の実態」「被災地の実態を把握する」のように使われます。
「実態」は、外見からでは分かりにくい様子や実際に調査しないと分からない状態のことを言い、普段は人目に触れない物事の内部事情や状況などを指しています。
以上のように「実体」は、「そのものの奥に秘められた本当の姿」という意味があり、その物の正体や本当の姿を問いたい場面で使われ、物や人などが対象となります。
一方「実態」は、「実際の状態や本当のありさま」という意味があり、物事の現実の状況や状態を調べて、明らかにしたい場面で使われ、具体的な現状に焦点を当てています。
記事の参考文献
- 偏 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版,三省堂.
- 偏 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之(2011)『新明解国語辞典』第七版,三省堂.
- 編著 北原保雄(2010)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
- 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年12月2日).
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年12月2日).
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
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