「定石」と「定跡」の意味と違い
「定石」と「定跡」は、いずれも「じょうせき」と読み、「囲碁や将棋における最善の打ち方」という共通点はありますが、それぞれの意味と使われる場面や目的には違いがあります。
日常生活などでも、よく見聞きしますが、どのような違いがあるのでしょうか。
本記事ではその「定石」と「定跡」の意味と違いを深掘りし、用例などを通じて、使い分けのポイントについて解説していきます。
紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がりますので、ぜひ参考にしてみてください。
「定石」

「定石」は、「囲碁でその局面で最善とされる一定の打ち方」や「物事を処理する上で一般に最善とされる方法や手順」という意味を持ちます。
「定石」の「定」は、「定まる」「動かない」「きまり」「おきて」の意味があり、「石」は、「いし」「いしでできているもの」「いしのようにかたいもののたとえ」という意味があります。
したがって「定石」は、「石のように固く動かないもの」という意味になります。
しかし実際は、上述のように「囲碁でその局面で最善とされる一定の打ち方」や「物事を処理する上で一般に最善とされる方法や手順」という意味で使われるので、相違がある点に注意が必要です。
なお、「定石」の類義語は、「習慣」「しきたり」「慣例」が挙げられ、「定石」は「定石通りにゲームを進める」「彼は定石にとらわれない発想をする」のように使われます。
「定石」は囲碁やオセロなどの石を用いるゲームで使われる言葉で、「セオリー」と言い換えられることもあります。
「定石」は元来、囲碁においてその局面で最善とされる決まった石の打ち方のことの意味で使う言葉でしたが、それが転じて「物事を処理する上で一般に最善とされる方法や手順」という意味でも使われるようになりました。
「定跡」
「定跡」は、「将棋でその局面で最善とされる一定の打ち方」や「定石」と同じ「物事を処理する上で一般に最善とされる方法や手順」という意味を持ちます。
「定跡」の「定」は上述の通り、「定まる」「動かない」「きまり」「おきて」の意味があり、「跡」は、「あしあと」「物事が行われたあと」「あとをつぐ」という意味があります。
したがって「定跡」は、「決まった跡」という意味になります。
しかし実際は、上述のように「将棋でその局面で最善とされる一定の打ち方」や「物事を処理する上で一般に最善とされる方法や手順」という意味で使われるので、「定石」と同様に相違がある点に注意が必要です。
なお「定跡」の類義語は、「機軸」「手段」「仕様」などがあり、「定跡」は「定跡に従った堅実なやり方だ」「将棋は序盤が定跡化されている」のように使われます。
「定跡」は将棋やチェスなどの駒を用いるゲームで使われる言葉で、チェスでは「オープニング」と言い換えられることがあります。
「定石」と「定跡」は「物事を処理する上で一般に最善とされる方法や手順」という意味に関しては同じですが、一般用語として「定石」が浸透しているので、「定石」を使用した方が無難です。
ただ「〇〇でその局面で最善とされる一定の打ち方」という意味では、〇〇が囲碁なら「定石」、〇〇が将棋なら「定跡」と明確な違いがあるので、しっかりとした使い分けをしましょう。
以上のように「定石」は「物事を処理する上で一般に最善とされる方法や手順」という意味を持ち、囲碁などの石を用いるゲームで使う言葉になります。
一方「定跡」は、「定石」と同様に「物事を処理する上で一般に最善とされる方法や手順」という意味を持ちますが、将棋などの駒を用いるゲームで使う言葉になります。
記事の参考文献
- 偏 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版,三省堂.
- 偏 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之(2011)『新明解国語辞典』第七版,三省堂.
- 編著 北原保雄(2010)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
- 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2025年2月21日).
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2025年2月21日).
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
コメントを残す