「寄港」「帰港」の意味と違い
「寄港」「帰港」は、「きこう」と同じ読み方をします。どちらも船が港に入ることを意味しますが、目的や状況が異なります。これらの言葉には、どのような違いがあるのでしょうか。
本記事ではその「寄港」と「帰港」の意味と違いを深掘りし、用例などを通じて、使い分けのポイントについて解説していきます。
紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がります。ぜひ参考にしてみてください。
「寄港」
「寄港」は「航海中の船が途中の港に立ち寄ること」「目的地へ向かう船舶や航空機が、途中で他の港や空港に立ち寄ること」という意味を持ちます。
「寄港」の類義語としては、「停泊」が挙げられます。
「寄港」の「寄」は、「よる」「身をよせる」「一時的に立ち寄る」の意味を持ち、「港」は「みなと」「船・航空機の発着所」という意味を持ちます。
したがって「寄港」は、「船が港に一時的に立ち寄ること」すなわち「目的地へ向かう船舶や航空機が、途中で他の港や空港に立ち寄ること」という意味になります。
「大型クルーズ船が横浜港に寄港する」「寄港先で水と食料を補給する」「漁船が水揚げのため、近くの港に寄港する」のように使われます。
「寄港」は、最終目的地に向かう船や航空機が、燃料や食料の補給、荷物の積み下ろしや乗客の乗降などのために一時的に途中の港に立ち寄る場合に使います。
クルーズ船などが数日間停泊することがありますが、停泊期間を問わず用が済み次第、港から離れるような一時的な利用な仕方が、「寄港」に当たります。
また、「寄港」と似た言葉に「寄航」があり、「航空機が目的地への航路の途中でどこかの空港に立ち寄ること」という意味になります。
「帰港」
「帰港」は、「船が出発した港に帰ること」という意味を持ちます。
「帰港」の対義語としては、「出港」が挙げられます。
「帰港」の「帰」は、「かえる」「もとの所に戻る」「あるべき所のおさまる」との意味を持ち、「港」は、上述のとおり「みなと」の意味を持ちます。
したがって「帰港」は、「船が出発した港に帰ること」という意味になります。
「実習船が無事に帰港した」「貨物船が帰港するのは、明朝の予定です」「帰港式が盛大に行われる」のように使われます。
「帰港」は、船中心に使われる言葉です。「帰る」という字のとおり、作業や航海が終了し、船が出発した港に戻る場合に使います。
そして、「帰港」と似た言葉に「帰航」がありますが、「船または航空機が帰りの航路につくこと」という意味があります。
「寄航」は「航空機が空港に寄る」と航空機のみが対象ですが、「帰航」は航空機にも船にも使えます。
なお、宇宙船の場合は、「帰航」が使われます。
以上のように「途中で一時的に立ち寄ること」に焦点を当てた「寄港」は「船が港に寄る」、「寄航」は「航空機が空港に寄る」ということを指します。
一方、「帰ること」に焦点を当てた「帰港」は「船が出発した港に帰ること」の意味となり、「帰航」は「船または航空機が帰りの航路につくこと」を指します。
記事の参考文献
- 偏 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版,三省堂.
- 偏 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之(2011)『新明解国語辞典』第七版,三省堂.
- 編著 北原保雄(2010)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
- 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年12月7日).
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年12月7日).
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
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