「交付」と「公布」の意味と違い
「交付」と「公布」は、いずれも「こうふ」と読み、「公式に何かを発すること」という共通点はありますが、それぞれの意味と使われる場面や目的には違いがあります。
日常生活やビジネスシーンなどでよく見聞きしますが、どのような違いがあるのでしょうか。
本記事ではその「交付」と「公布」の意味と違いを深掘りし、用例などを通じて、使い分けのポイントについて解説していきます。
紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がりますので、ぜひ参考にしてみてください。
「交付」
「交付」は、「公の機関が、一般の人に書類や金品などを引き渡すこと」という意味を持ちます。
「交付」の「交」は、「交わる」「入れかわる」「手渡す」の意味があり、「付」は、「つける」「授け与える」「任せる」という意味があります。
したがって「交付」は、「物を手渡す、授け与える」すなわち「公の機関が、一般の人に書類や金品などを引き渡すこと」という意味になります。
なお、「交付」の類義語は、「発行」「授与」「配布」「給付」などが挙げられ、「交付」は「新しい運転免許証が交付された」「役所で住民票の写しを交付してもらう」「被災者に対して支援金を交付する」のように使われます。
「交付」は、行政機関や役所などの公的機関が一般の人に対して書類や金銭などを引き渡すことを意味し、一定の手続きを経て、該当の物品を引き渡す行為を指します。
「交付」の主体は公的機関のみであり、所定の手続きを踏み、一定の条件を満たした個人・団体などの特定の相手を対象とし、渡されるものは金銭や書類などが一般的です。
例えば、各種免許証やパスポートなどの発行、国や公共団体が特定の目的のために提供する補助金や交付金の給付などが「交付」に該当します。
「公布」
「公布」は、「広く世の中に知らせること」や「法令・条約の成立及びその内容を官報などによって広く一般国民に知らせること」という意味を持ちます。
「公布」の「公」は、「おおやけ」「国家や政府に関すること」「世間一般」という意味があり、「布」は「麻や綿などの織物」から転じて「平らに敷き広げる」「広く行き渡らせること」という意味があります。
したがって「公布」は、「世間一般に広く行き渡らせること」また「国や政府が何かを広く行き渡せること」となり、一般的には「法令・条約の成立及びその内容を官報などによって広く一般国民に知らせること」という意味が浸透しています。
なお「公布」の類義語は、「公告」「公示」「告示」「告知」などがあり、「公布」は「憲法の改正が公布される」「新しい条例が公布された」「大統領令が公布され、即日施行された」のように使われます。
「公布」は、国や政府が成立した法令・条約などの内容を公表し、国民全体に知らせることを意味し、一般の人々が知ることができるように、国の広報誌としての役割を持つ「官報」などで発表される場合が多いです。
法令などが新しく制定されたり、内容に変更があった場合に、国民全体に向けて発表する「公布」によって、国民は法令の内容を事前に知ることができ、その法令に適応するための準備をすることが可能となります。
なお「公布」は上述のように、国民に周知することが目的で、実際に法令や条約の効力が生じるようになることを「施行」と言いますので、「公布」された段階では、法令や条約の効力は生じていません。
以上のように「交付」は、「公の機関が、一般の人に書類や金品などを引き渡すこと」という意味を持ち、行政機関が個人や団体に対して、文書や証明書、金銭などを渡す行為を指し、対象となる相手が特定されていることが特徴です。
一方「公布」は、「法令・条約の成立及びその内容を官報などによって広く一般国民に知らせること」という意味を持ち、国や政府が法令などを公表し、国民全体などに広く一般に知らせる行為を指し、対象者は不特定多数の人々です。
記事の参考文献
- 偏 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版,三省堂.
- 偏 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之(2011)『新明解国語辞典』第七版,三省堂.
- 編著 北原保雄(2010)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
- 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2025年2月3日).
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2025年2月3日).
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
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