「興行」と「興業」の意味と違い

「興行」と「興業」の意味と違い

「興行」と「興業」の意味と違い

興行」と「興業」は、同じ読み方でも意味が異なる同音異義語です。

そのニュアンスや使い方には微妙な違いがあるので、混同しないようにそれぞれの意味をしっかりと把握しましょう。

本記事ではその「興行」と「興業」の意味と違いを深掘りし、用例などを通じて、使い分けのポイントについて解説していきます。

紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がりますので、ぜひ参考にしてみてください。

「興行」

「興行」とは

 

 

興行」は「観客を集めて入場料を取り、映画や演劇などを視聴させること」「映画・演劇・相撲などを催し、観客に見せること」という意味を持ちます。

興行」の「興」は「おこす」「さかんになる」「はじまる」という意味があり、「行」は「おこなう」「ふるまう」という意味があります。

したがって「興行」は、漢字だけで見ると「おこす」「おこなう」が組み合わさった言葉になります。

しかし実際は、ただ「おこす」「行う」のではなく、「映画・演劇・相撲などを催し、観客に見せること」という意味で使われるので、若干の相違がある点に注意が必要です。

興行」は「地方を回って興行する」「映画の興行収入は去年以上だ」「新しい演劇を興行する」のように使われ、「興行」の類義語としては、「見世物」「演芸」「上映」「公演」などが挙げられます。

このように、「興行」は、「催し物をひらくこと」を表す言葉であり、その催し物として映画やスポーツ、演劇など様々な娯楽活動が企画されます。

なお、法律では2025年現在、「興行場法」という法律があり、興行場は「映画、演劇、音楽、スポーツ、演芸又は観せ物を、公衆に見せ、又は聞かせる施設」と定義されています。

「興業」

「興業」とは

興業」は、「新しく事業をおこすこと」「事業や産業を新しくおこすこと」という意味を持ちます。

興業」の「興」は上述の通り「おこす」「さかんになる」「はじまる」という意味があり、「業」は「わざ」「しごと」「つとめ」という意味があります。

したがって「興業」は、「仕事をおこす」すなわち「事業や産業を新しくおこすこと」という意味になります。

ただ、現代では、「興業」はただ事業や産業を新しく起こすだけでなく、起こした後にそれらを盛んにするという意味で使われることが多く、「地方は農業の興業に注力している」「地域の観光業を興業する」「利益増加のために興業主は悩んでいる」のように使われます。

このように「興業」は、新しく立ち上げた産業や、事業を発展させる行為を表す言葉で、地域経済の振興や企業活動の拡大に関連して使われることが多いです。

以上のように「興行」は、「映画・演劇・相撲などを催し、観客に見せること」という意味があり、その催し物として映画やスポーツ、演劇など様々な娯楽活動が企画されます。

一方「興業」は「事業や産業を新しくおこすこと」という意味があり、地域経済の振興や企業活動の拡大に関連して使われることが多いです。

記事の参考文献

  • 編 山田忠雄、柴田武、酒井憲二、倉持保男、山田明雄、上野善道、井島正博、笹原宏之 (2012)『新明解国語辞典』第七版, 三省堂.
  • 著 北原 保雄(2011-2019)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
  • 編 新村出 (2018,2019)『広辞苑』第七版, 岩波書店.
  • 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2025年2月1日).
  • 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2025年2月1日).
  • 編  一般社団法人共同通信社  (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
北澤篤史サイト運営者
1984年(昭和59年)、大阪府生まれ。言葉への関心が高じ、「ことわざ」「漢字」「四字熟語」をテーマに複数のウェブサイトを立ち上げる。これらのサイトは、小中学校の教材として利用されるほか、単語カードやタイピングゲームなど多様な形で活用されている。著書に『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(講談社)、『マンガでわかる すごい!ことわざ図鑑〈試験に出る〉』(講談社)がある。