「未踏」と「未到」の意味と違い
「未踏」と「未到」は、いずれも「みとう」と読み、どちらも「誰もたどり着いていないこと」という意味を持ちますが、それぞれの使われる場面や目的には違いがあります。
日常生活などでも、よく見聞きする言葉ですが、どのような違いがあるのでしょうか。
本記事ではその「未踏」と「未到」の意味と違いを深掘りし、用例などを通じて、使い分けのポイントについて解説していきます。
紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がりますので、ぜひ参考にしてみてください。
「未踏」

「未踏」は、「まだだれも足を踏み入れていないこと」や「まだ人が立ち入ったことがないこと」という意味を持ちます。
「未踏」の「未」は、「いまだ」「まだ…しない」の意味があり、「踏」は、「あしあと」「物が通ったあと」「物事が行われたあと」という意味があります。
したがって「未踏」は、「まだ誰も通ったことのない」つまり「まだ人が立ち入ったことがないこと」という意味になります。
なお、「未踏」の類義語は、「未開」「未知」などが挙げられ、「あの山は100年前までは未踏だった」「人跡未踏の地に向かう」のように使われます。
「未踏」は、「まだだれも足を踏み入れていない」や「まだ誰も到達していない」ときに使う言葉ですが、対象が限定されており、土地や場所を対象に使われます。
一方、下述する「未到」も同じニュアンスを持った言葉ですが、その対象が変わってきます。
「未到」
「未到」は、「まだ誰も到達していないこと」や「まだ誰もきわめていないこと」という意味を持ちます。
「未到」の「未」は上述の通り、「いまだ」「まだ…しない」の意味があり、「到」は、「いたる」「目的の場所に着く」「極限までいきつく」という意味があります。
したがって「未到」は、「いまだ、いきつかない」つまり「まだ誰も到達していない」という意味になります。
なお「未到」の類義語は、「空前絶後」などがあり、「未到」は「あの野球選手は前人未到の快挙を成し遂げた」「未到の記録に挑戦」のように使われます。
「未到」も「まだ誰も到達していない」ときに使う言葉ですが、その対象は業績や成績、記録で使われます。
以上のことより「未踏」と「未到」は「まだ誰も到達していない」という意味に関しては同じですが、「未踏」は「場所」に対して用い、「未到」は「業績や記録」に対して用いるという明確な違いがあります。
よって「未踏」は「まだ誰も足を踏み入れていない場所・土地」一方「未到」は「まだ誰も達成していない業績・記録」と覚えているとわかりやすいかもしれません。
ちなみに、これまで誰も成功したことのないことなどという意味の「前人未到」という言葉がありますが、本来なら「前人未踏」と使う場合も、新聞紙面では「前人未到」という表記に統一されています。
そのため「ぜんじんみとう」と書く際に「未踏」と「未到」のどちらを使えばいいか迷った場合は、「前人未到」を使う方が無難です。
記事の参考文献
- 偏 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版,三省堂.
- 偏 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之(2011)『新明解国語辞典』第七版,三省堂.
- 編著 北原保雄(2010)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
- 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2025年3月10日).
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2025年3月10日).
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
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