「温情」「恩情」の意味と違い
「温情」と「恩情」はどちらも「おんじょう」と読みますが、意味が違う同音異義語です。
「温情」も「恩情」も日常でよく見聞きする言葉ですが、相手の立場によって使い方を変える必要があります。間違えずに使い分けができるよう、それぞれの言葉の意味と違いについて、説明していきます。
「温情」と「恩情」の使い方で迷った時はぜひ参考にしてみて下さい。
「温情」
「温情」には、「あたたかみがあり、思いやりのある優しい心」や「情け深く、寛大な心」という意味があります。「温情あふれる振る舞い」「恩師の温情に満ちた言葉」などのように使います。「温情」の類義語は「御情け」や「恩恵」また下述する「恩情」などがあります。
「温情」の「温」には「あたたかい」という意味のほかに「おだやか」や「やさしい」という意味があり、「情」には「こころ」「きもち」という意味があります。すなわち「温情」は「穏やかな心」という意味になるのです。
「温情」は目下、目上の人など相手の立場に関わらず使える言葉ですが、自分に対しては使えず、他者に対して使う言葉です。「温情采配」「温情裁判」など四字熟語でも使われます。一方の「恩情」は「温情」と意味は近いですが、どの立場の人に対しても使えるわけではありません。
「恩情」
「恩情」は、「(目上の人が目下の人へかける)情けある心」や「いつくしみの心」という意味があります。「師の恩情に報いる」「両親からの恩情を感じる」などのように使います。「恩情」の類義語は上述の「温情」や「御情け」「恩恵」などがあり、「温情」と似た意味を持ちます。
「恩情」の「恩」の字には「いつくしみ」「恵み」という意味があるので、「恩情」は「いつくしみの心」「恵の心」という意味になります。
「温情」は相手の立場に関わらず、使える言葉ですが、「恩情」は「恩」の字からもわかるように、「いつくしみの心」「恵の心」というニュアンスがあり、目上の者が目下の者に対してかける言葉です。そのため、「同級生から恩情を受けた」「部下が上司に恩情をかける」などの使い方はできません。
「温情」も「恩情」も、意味に大きな違いはありませんが、目上の人が目下の人へかける「恩情」は、「温かみ」や「優しさ」がありますが、それに加え、「情け」や「いつくしみ」といったニュアンスが強くなります。
記事の参考文献
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編 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版.三省堂.
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編著 北原保雄 (2010)『明鏡国語辞典』第二版, 大修館書店
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編 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之 (2011)『新明解国語辞典』第七版, 三省堂.
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年9月28日).
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