「裁決」「採決」の意味と違い

「裁決」「採決」の意味と違い

「裁決」「採決」の意味と違い

裁決」と「採決」は、いずれも「さいけつ」と読み、「決定を下す行為」という共通点はありますが、それぞれの意味と使われる場面や目的が異なります。

日常生活やビジネスシーンなどで多く使われていますが、どのような違いがあるのでしょうか。

本記事ではその「裁決」と「採決」の意味と違いを深掘りし、用例などを通じて、使い分けのポイントについて解説していきます。

紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がりますので、ぜひ参考にしてみてください。

「裁決」

「裁決」

裁決」は、「上位にある者が、その物事が良いか悪いかを裁いたり、決定すること」や「行政庁の行った処分・決定に対する不服申し立てについて、行政庁の下す判断」という意味を持ちます。

裁決」の「裁」は、「さばく」「布を断ち切る」「是非善悪を判断して決める」の意味があり、「決」は、「決める」「最終的に定める」「可否を決める」という意味があります。

したがって「裁決」は、「是非善悪を判断して最終的に定める」すなわち「上位にある者が、その物事が良いか悪いかを裁いて決定すること」という意味になります。

なお、「裁決」の類義語としては、「決裁」「判定」「決定」「判決」などが挙げられ、「裁決」は「取締役会の裁決により経営方針が決まる」「業務の優先順位について社長の裁決を仰ぐ」のように使われます。

裁決」は、上の地位にいるものが、物事を決定することで、全員で多数決で決めるというよりも、上の地位の人の中で決定されるという意味合いがあります。

また、上述のように「裁決」は行政に関連する問題を行政庁・行政機関が下す判断のことで、裁判所が下した判断の結果である「判決」とは区別されます。

ちなみに、馴染みが薄いかもしれませんが、「裁決」は行政不服審査法(行政庁の処分等によって不利益を受けた国民が不服を申し立て、これを行政庁が審査する手続について定めた法律)では「行政庁が審査請求または再審査請求に対して判断を加える行為」という意味を持ちます。

「採決」

「採決」

採決」は、「議長が、会議構成員の賛否の意思表示を求め、議案の可否を決定すること」という意味を持ちます。

採決」の「採」は、「とる」「拾いとる」「選びとる」の意味があり、「決」は、上述のとおり「決める」「最終的に定める」「可否を決める」という意味があります。

したがって「採決」は、「可否を選んで最終的に決めること」すなわち「議長が、会議構成員の賛否の意思表示を求め、議案の可否を決定すること」という意味になります。

なお「採決」の類義語は、「決議」「議決」「票決・表決」などがあり、「採決」は「採決の結果、賛成多数で承認された」「採決の前に各議員が意見を述べる」「委員会は強行採決を断行した」のように使われます。

採決」は、会議や議論の場で何らかの議案や提案について、賛否を決定するために、投票や挙手などの方法で意思決定を行うことを指し、一般的には、会議構成員に多数決をとって結論を出します。

なお、「採決」により可否同数となった場合は、構成員の上位者である議長や委員長が、可否の決定をする「裁決」が行われる場合が多いです。

地方議会などでは、本会議において議長は議決(採決)に加わらず、「可否同数の時は議長が可否を決定する」と法令で定めています。

以上のように「裁決」は、是非や善悪を判断して物事を裁いたり決定する行為を指し、権限を持つ行政機関や上位の人が最終的な判断を下すことを意味します。

一方採決は、議会や会議の構成員に議案の賛否を選ばせる行為を指し、多数決などにより意見をまとめ、可否を決定することを意味します。

記事の参考文献

  • 偏 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版,三省堂.
  • 偏 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之(2011)『新明解国語辞典』第七版,三省堂.
  • 編著 北原保雄(2010)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
  • 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年12月29日).
  • 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年12月29日).
  • 編  一般社団法人共同通信社  (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
北澤篤史サイト運営者
1984年(昭和59年)、大阪府生まれ。言葉への関心が高じ、「ことわざ」「漢字」「四字熟語」をテーマに複数のウェブサイトを立ち上げる。これらのサイトは、小中学校の教材として利用されるほか、単語カードやタイピングゲームなど多様な形で活用されている。著書に『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(講談社)、『マンガでわかる すごい!ことわざ図鑑〈試験に出る〉』(講談社)がある。