「視覚」と「視角」の意味と違い
「視覚」と「視角」は、いずれも「しかく」と読み、「見ることに関すること」という共通点はありますが、それぞれの意味と使われる場面や目的には違いがあります。
日常生活などでよく見聞きしますが、どのような違いがあるのでしょうか。
本記事ではその「視覚」と「視角」の意味と違いを深掘りし、用例などを通じて、使い分けのポイントについて解説していきます。
紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がりますので、ぜひ参考にしてみてください。
「視覚」

「視覚」は、「光の刺激を受けて、目で見る感覚」や「目で物を見る際の、視神経の働き」という意味を持ちます。
「視覚」の「視」は、「みる」「目で見る」「注意して見る」の意味があり、「覚」は、「おぼえる」「悟る」「道理を知る」という意味があります。
したがって「視覚」は、「目で見る感覚」すなわち「光の刺激を受けて、目で見る感覚」という意味になります。
なお、「視覚」の類義語は、「視認」が挙げられ、「視覚」は「映像を巧みに使って視覚を刺激する」「人間の視覚は色や動きを識別する能力を持つ」「視覚に障害のある人のため、音声案内を活用する」のように使われます。
「視覚」とは、目の網膜に光が当たると視細胞に興奮が起こり、視神経を通して大脳の視覚野に伝えられ、明暗・光の方向や物の色・動き・距離などを認知する五感(視覚・聴覚・臭覚・味覚・触覚)の一つです。
さらに「視覚」は、目を通して外界の情報を受け取る感覚のことを指し、色を識別すること、物体の形状などを見分ける「視力」、広範囲を見渡す「視野」などが含まれ、「視覚」によって得られる情報量は計り知れません。
「視角」
「視角」は、「目で物体の両端を結んだ二直線のなす角の大きさ」や「物事を見る角度、見る立場」という意味を持ちます。
「視角」の「視」は上述のとおり、「みる」「目で見る」「注意して見る」という意味があり、「角」は、「かど」「物の先」「二直線が交わってできる図形、交わり方」という意味があります。
したがって「視角」は、「物を見る角度」すなわち「目で物体の両端を結んだ二直線のなす角の大きさ」という意味になります。
なお「視角」の類義語は、「視点」「視野」「見地」「観点」などがあり、「視角」は「レンズの視角を調整し、より広い範囲を撮影する」「鷲は広い視角を持ち、遠くの獲物も見つけられる」「ミラーの視角を調整し、運転席からの死角を減らす」のように使われます。
「視角」は、見ている物体の左右または上下の両端から目までの二直線がつくる角度をいい、ある物体を見るときの視線の角度や範囲を指し、「視角」によって人間の眼は、物体の大きさを判断しています。
「視角」は上述のとおり、基本的には物を見るための範囲や角度を表す言葉ですが、「物事を見る角度、見る立場」の意味合いでも用いられ、「時折、視角を変えてみるのも必要だ」のように、異なった観点や視点を持つことのニュアンスでも使われます。
なお、見ることに関する同音異義語に「死角」がありますが、ある角度からは見ることが出来ない範囲のことを指し、視角・視界の外や注意が及ばない部分という意味で「死角」は使われています。
以上のように「視覚」は、「光の刺激を受けて、目で見る感覚」という意味を持ち、目で物を見る力そのものを指し、物の色・形・明るさ・動きなどを認識する能力を言います。
一方「視角」は、「物を見る角度」という意味を持ち、物の見える範囲や角度を指すことのほか、物事を見る角度・考え方や立場の意味合いでも広く使われています。
記事の参考文献
- 偏 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版,三省堂.
- 偏 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之(2011)『新明解国語辞典』第七版,三省堂.
- 編著 北原保雄(2010)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
- 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2025年2月8日).
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2025年2月8日).
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
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