「嗜好」「志向」の意味と違い
「嗜好」と「志向」。これらは同じ読み方でも意味が異なる「同音異義語」です。他にも「異動・移動」や「意思・意志」などがあります。これらは意味を混同しやすく、文章を書く際に、どちらを使うべきか頭を悩ませた経験があるかもしれません。
本記事では、「嗜好」と「志向」の意味や使い分けについて解説していきます。違いを理解し、ぜひ自信を持って使い分けられるようになりましょう。
「嗜好」
「嗜好」は「個人的な好みや趣味のこと」「たしなみ、このむこと」という意味になります。愛好、好き嫌い、お気に入りと言い換えることもできます。「嗜好が変わって甘い物が好きになった」「高級ブランドへの嗜好」「コーヒーは個人の嗜好によって好みが分かれる」などのように使われます。
「嗜好」の「嗜」は訓読みで「たしなみ」「たしなむ」と読み、言葉どおり「たしなむ」「好んで親しむ」という意味を持ちます。「好」は訓読みで「すき」「このむ」と読み、「このむ」「愛する」「すく」という意味を持ちます。したがって「嗜好」は「好んでたしなむ」という意味になります。
「嗜好」は人的な好みや趣味のこと、特に飲食物に関する好みを指すことが多くあり、日常的によく使われる言葉です。感情や感覚に基づいた好みを強調します。
「嗜好」はより狭い範囲で、主に個人の趣味や好みに対して使用されます。一方、より広い範囲で人生の方向性や価値観を含む文脈の場合は、下述する「志向」が使用されます。
「志向」
「志向」は「ある方向に向かうこと、ある目標を目指すこと」という意味になります。意図する、志す、目指すなどと言い換えることもできます。「平和を志向する」「環境保護を志向した政策が必要」などのように使われます。
「志向」の「志」は訓読みで「こころざす」「こころざし」と読み、言葉どおり「志す」「心がある方向を目指して動く」「心の目指すところ」という意味を持ちます。「向」は訓読みで「むく」「むき」「むかう」と読み、「ある方向に向かう」「心が目指す」という意味を持ちます。したがって「志向」は「ある方向に心が向かう・目指す」という意味になります。
「志向」は人が意図的に何かに向かって行動する方向性や姿勢を表します。「嗜好」と比較すると、やや抽象的な概念、考え方、生き方などを指す場合に使用されます。
このように、「嗜好」と「志向」はどちらも「しこう」という読みの熟語になりますが、意味が異なるため使用される文脈も違ってきます。個人の好き嫌いや趣味に関する好みを表す場合は「嗜好」、意識的に何かを目指す方向性や姿勢を表す場合は「志向」と使い分けることができます。
記事の参考文献
- 編 藤堂 明保・松本 昭・竹田 晃・加納 喜光・ (2001)『漢字源』改訂新版, Gakken.
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.『漢字ペディア』.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年9月9日).
- 編 新村 出 (2008)『広辞苑』第六版, 岩波書店.
- 編 沖森 卓也・中村 幸弘(2015).『ベネッセ表現読解国語辞典』
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
- 小学館.『デジタル大辞泉』. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年9月9日).
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