「私立」「市立」の意味と違い

「私立」「市立」の意味と違い

「私立」「市立」の意味と違い

私立」と「市立」は、同じ読み方でも意味が異なる同音異義語です。

そのニュアンスや使い方には微妙な違いがあるので、混同しないようにそれぞれの意味をしっかりと把握しましょう。

本記事ではその「私立」と「市立」の意味と違いを深掘りし、用例などを通じて、使い分けのポイントについて解説していきます。

紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がりますので、ぜひ参考にしてみてください。

「私立」

「私立」とは

私立」は「私人がその費用で設立し、維持すること」「個人や法人が設立し、管理・運営していること」という意味を持ちます。

私立」の「私」は「わたし」「自分」「個人のこと」という意味があり、「立」は「たつ」「たてる」という意味があります。

したがって「私立」は、「個人が立てる」すなわち「個人や法人が設立し、管理・運営していること」という意味になります。

「私立大学の数は多い」「彼女は私立病院に搬送された」「私立の学校の方が制服がかわいい」のように使われ、「私立」の対義語としては、「公立(市立)」「国立」が挙げられます。

私立」は「民間に運営されている施設」を指すときに使われ、主に学校や病院に付けられる言葉です。

また「私立」と「市立」は聞いただけではどちらの意味なのか判断できないため、「私立」は「わたくしりつ」、「市立」は「いちりつ」と読まれることがあります。

「市立」

「市立」とは

市立」は、「自治団体である市の費用で設立・経営すること」「市が設立し、管理・運用すること」という意味を持ちます。

市立」の「市」は「まち」「行政区画の一つ」の意味があり、「立」は上述の通り、「たつ」「たてる」という意味があります。

したがって「市立」は、「市が立てる」すなわち「市が設立し、管理・運用すること」という意味になります。

「昨年、市立動物園が設立された」「ここはお気に入りの市立図書館です」「あそこの市立科学館は来場者がかなり多い」のように使われ、「市立」の対義語としては、「私立」が挙げられます。

市立」は「市の予算で運営されている施設」を指すときに使われ、学校や病院以外に図書館、博物館など教育機関や公共施設に付けられます。

なお、「私立学校」と「市立学校」は、それぞれ入試試験や学習カリキュラムなどが異なり、「私立病院」と「市立病院」は、それぞれ役割や施設数、休診日などが異なります。

以上のように「私立」は、「個人や法人が設立し、管理・運営していること」という意味があり、主に学校や病院に付けられる言葉です。

一方「市立」は、「市が設立し、管理・運用すること」という意味があり、学校や病院、図書館、博物館など教育機関や公共施設に付けられる言葉です。

記事の参考文献

  • 編 山田忠雄、柴田武、酒井憲二、倉持保男、山田明雄、上野善道、井島正博、笹原宏之 (2012)『新明解国語辞典』第七版, 三省堂.
  • 著 北原 保雄(2011-2019)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
  • 編 新村出 (2018,2019)『広辞苑』第七版, 岩波書店.
  • 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年12月31日).
  • 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年12月31日).
北澤篤史サイト運営者
1984年(昭和59年)、大阪府生まれ。言葉への関心が高じ、「ことわざ」「漢字」「四字熟語」をテーマに複数のウェブサイトを立ち上げる。これらのサイトは、小中学校の教材として利用されるほか、単語カードやタイピングゲームなど多様な形で活用されている。著書に『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』(講談社)、『マンガでわかる すごい!ことわざ図鑑〈試験に出る〉』(講談社)がある。