「市政」と「市制」の意味と違い

「市政」と「市制」の意味と違い

「市政」と「市制」は、いずれも「しせい」と読み、「地方自治に関すること」という共通点はありますが、それぞれの意味と使われ方には違いがあります。

日常生活などでよく見聞きしますが、どのような違いがあるのでしょうか。

本記事ではその「市政」と「市制」の意味と違いを深掘りし、用例などを通じて、使い分けのポイントについて解説していきます。

紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がりますので、ぜひ参考にしてみてください。

「市政」

「市政」は、「地方自治体としての市の政治」という意味を持ちます。

「市政」の「市」は、「物を売り買いする所、いち」「人の集まるにぎやかな所、まち」の意味があり、「政」は、「まつりごと」「世の中を治めること」「物事を治めること」という意味があります。

したがって「市政」は、「まちを治めること」すなわち「地方自治体としての市の政治」という意味になります。

「市政」は「市政の改革を公約に掲げて立候補する」「住民の声を反映した市政を実現する」「市政の透明性を図るための対策が急務です」のように使われます。

「市政」とは、市（地方自治体）の政治や行政の運用のことを意味し、市の行政機関が、市民の生活を支えるために行う政策や管理、公共サービスなどを指します。

さらに「市政」は、市民の意見が反映されなければならず、住民は市議会議員や市長を選挙によって選び、これらの代表者に「市政」の運営を委ねています。

また「市政」は、市議会の決定に基づき、実際の仕事（市政）を行う、市長をはじめとする役所の職員などが、まちづくりや福祉、教育、道路、上下水道など、市民の生活と深くかかわる仕事をしています。

「市制」

「市制」は、「地方自治体としての市の制度」という意味を持ちます。

「市制」の「市」は上述のとおり、「物を売り買いする所、いち」「人の集まるにぎやかな所、まち」という意味があり、「制」は、「従わせる」「決まり」「定め」という意味があります。

したがって「市制」は、「まちの決まり」すなわち「地方自治体としての市の制度」という意味になります。

「市制」は、「市制100周年を記念してのイベントが開催された」「昭和30年に市制を施行し、市へと昇格した」「明治時代に市制・町村制が整備された」のように使われます。

「市制」は、自治体としての市の成立や運営に関する法律や規則の枠組みを意味し、ある地域が正式に「市」をして認められるためには、「人口が5万人以上であること」や「中心市街地の戸数が、全戸数の6割以上であること」などの条件を満たす必要があります。

なお、町村から市になることで、国や県の指導によらず、直接実施できる事務権限が多くなることから、福祉関係をはじめ、きめ細やかな施策を行うことが出来るとされています。

また「市制」には、「市の構成・組織・機能などを定めた旧憲法下の法律」という意味もあり、昭和22年（1947年）地方自治法の制定により、廃止されるまで規定されていた明治憲法下での「市制・町村制」のことを指します。

ちなみに地方自治法の施行前は、議会の議長となる市長は、国の内務大臣が選ぶ仕組みとなっており、市議会議員も誰でもなれるわけではなく、高額納税者しかなれませんでした。

以上のように「市政」は、「地方自治体としての市の政治」という意味を持ち、福祉、教育、道路、下水道など、市民の生活と深くかかわる仕事の運営や管理などを指します。

一方「市制」は、「地方自治体としての市の制度」という意味を持ち、市の成立に関する制度や法律のことを指します。

記事の参考文献

北澤篤史サイト責任者

漢字熟語・四字熟語・ことわざ・慣用句の専門家。著書に『マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる すごいことわざ図鑑』『〈試験に出る〉マンガでわかる おもしろい四字熟語図鑑』(共に講談社)がある。ことわざ学会研究フォーラムでは、「備えあれば憂いなし：ことわざを通して意識づける災害時の命を守る知恵」「WEB上でのことわざ探求：人々が何を知りたいのか」などをテーマに研究報告を行う。