「対照」「対称」「対象」の意味と違い
「対照」「対称」「対象」は日常的によく使われる言葉です。いずれも「たいしょう」と読みますが、意味が異なるため、メールや手紙など文章で伝える際に正しく使い分ける必要があります。この3つの言葉を正確に使い分けられているでしょうか。
本記事では「対照」「対称」「対象」の意味と違い、用例などを深掘りしていきます。文脈に応じて使い分けることができると表現の幅広がります。ぜひ参考にしてみてください。
「対照」
「対照」は「他と照らし合わせること」「比べ合わすこと」「互いに対立する二つの要素が際立つこと」という意味を持ちます。類語に「照合」「対比」などが挙げられます。
「都会と田舎の生活は対照的だ」「白と黒の対照が美しい」「AグループとBグループを対照実験する」などのように使われます。
「対照」の「対」は「むかう」「つれあい」「こたえる」「そろい」と読み、「むかう」「むきあう」「つい」「そろい」という意味を持ちます。「照」は「てる」「てらす」と読み、「てらしあわせる」「見くらべる」という意味を持ちます。
したがって「対照」は「二つを照らし合わせて比べること」という意味になります。
「対照」は二つのものを比べたときの違いがはっきりしていること、またはその違いや特徴を比較することを意味します。 比較や対比を行う場面で使用されます。
同じ「対」という字を使っていますが、下述する「対称」「対象」はニュアンスが異なります。
「対称」
「対称」は「互いに対応しながらつりあいを保っていること」という意味を持ちます。類語に「シンメトリー」が挙げられます。
「この模様は左右対称だ」「対称的な建築デザイン」「蝶の羽の模様は対称になっている」などのよううに使われます。
「対称」の「対」は「むかう」「つれあい」「こたえる」「そろい」と読み、「むかう」「むきあう」「つい」「そろい」という意味を持ちます。「称」は「かなう」と読み、「かなう」「つりあう」という意味を持ちます。
したがって「対称」は「対応しながらつり合っていること」という意味になります。
「対称」は、中心線や点などの基準に対して左右や上下などが均等でつり合いが取れていることを意味します。図形やデザインなどの対称性がある形状や構造を表す際に使用されます。
「対象」
「対象」は「行為の目標となるもの」「めあて」「 哲学で、主観や意識に対してあり、その認識や意志などの作用が向けられるもの」という意味を持ちます。
「20代の女性を対象とした商品」「研究の対象となる現象」「調査の対象を絞る」などのように使われます。
「対象」の「対」は「むかう」「つれあい」「こたえる」「そろい」と読み、「むかう」「むきあう」「つい」「そろい」という意味を持ちます。「象」は「かたち」「かたどる」と読み、「かたち」「すがた」「ようす」「ありさま」という意味を持ちます。
したがって「対象」は「姿に向き合う」すなわち「働きかけの目標とするもの」「めあて」という意味になります。
「対象」は、ある行為や考えが向けられる相手や物事を指します。観察や調査、行動の目的となる人や物に対して使用されます。
以上のように、「対照」「対称」「対象」は読みは同じでも意味が異なる言葉になります。比較や対比を行う際は「対照」、形状や配置の特徴を表現するのは「対称」、行為の目標となるもの・めあては「対象」と使い分けることが可能です。
文脈にあった言葉を適切に使い分けることが重要です。
記事の参考文献
- 編 藤堂 明保・松本 昭・竹田 晃・加納 喜光・ (2001)『漢字源』改訂新版, Gakken.
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.『漢字ペディア』.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年11月5日).
- 編 新村 出 (2008)『広辞苑』第六版, 岩波書店.
- 編 沖森 卓也・中村 幸弘(2015).『ベネッセ表現読解国語辞典』
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.
- 小学館.『デジタル大辞泉』. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年11月5日).
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