
「勇姿」と「雄姿」の違い

「勇姿」と「雄姿」は、いずれも「ゆうし」と読み、「力強さや美しい姿を表現する言葉」という共通点はありますが、それぞれの意味と使われ方には違いがあります。
日常生活などでよく見聞きしますが、どのような違いがあるのでしょうか。
紛らわしい言葉ですが、使い分けることができれば、表現の幅が広がります。

「勇姿」とは?マンガで使い方をわかりやすく解説

「勇姿」は、「勇ましい姿」「勇敢な姿」「勇壮な容姿」という意味を持ちます。
「勇姿」の「勇」は、「勇ましい」「思い切りがよい」「いさぎよい」の意味があり、「姿」は、「すがた」「かたち」「様子」という意味があります。
したがって「勇姿」は、「勇ましい姿」という意味になります。

なお、「勇姿」の類義語は、「偉容・威容」「英姿」「雄姿」などが挙げられ、「勇姿」は
- 「消防士たちが人々を救い出す勇姿に、多くの人が感動した」
- 「全力を尽くした選手たちの勇姿は、人々に勇気を与えた」
- 「歴史に名を残す武将たちの勇姿は、今も語り継がれている」
のように使われます。
「勇姿」は、意気が盛んで勢いがあり、恐れずに危険や困難に向かっていく様子を表します。
勇気や気迫が感じられる場面で使われることが多く、戦いや競技などの勝負ごとに臨んだ時の心や態度を表しています。

「雄姿」とは?マンガで使い方をわかりやすく解説
「雄姿」は、「雄々しく堂々とした姿」という意味を持ちます。
「雄姿」の「雄」は、「雄(動植物のオス)」「勇ましく強い」「すぐれた人」の意味があり、「姿」は上述のとおり、「すがた」「かたち」「様子」という意味があります。
したがって「雄姿」は、「雄々しい姿」すなわち「雄々しく堂々とした姿」という意味になります。

なお「雄姿」の類義語は、「偉容・威容」「英姿」「勇姿」などがあり、「雄姿」は、
- 「優勝したチームの雄姿が新聞に掲載された」
- 「そびえ立つ富士山の雄姿に、観光客は感動した」
- 「巨大なダムの雄姿は、まさに技術の結晶である」
のように使われます。
「雄姿」は、雄大な様子や堂々とした姿を意味し、威風堂々とした雰囲気や風格がある場面で使われます。
そして、男性的で力強い様子や壮大な自然の景観を形容するのに適しているとされています。
上述のとおり「勇姿」は人に限定して用い、人と物の両方を表せる「雄姿」の方が、より広い場面で使え汎用性がありますが、両者とも同じようなニュアンスを持っています。

「勇姿」と「雄姿」の使い分け
「勇姿」は、「勇ましい姿」という意味を持ち、勇気や戦う姿勢に焦点を当て、人が恐れることなく勇ましい姿を見せることを表す言葉です。
一方「雄姿」は、「雄々しく堂々とした姿」という意味を持ち、男性的で力強い様子や自然や物事などに圧倒され、素晴らしい姿を見た際に感動する気持ちを表す言葉です。
日本新聞協会では、似たニュアンスを持つ「勇姿」と「雄姿」の表記をより汎用性の高い「雄姿」に統一すると定めていますので、使い分けで迷った場合は「雄姿」を使えば問題ありません。
しかし、「雄姿」を「女性に使っていいの?」や「女性の雄姿」と使い方に疑問や違和感を抱く人は、「勇姿」を用いることも選択肢となります。
理解度チェック!「勇姿」「雄姿」のクイズ問題

Q1
「消防士たちが人々を救い出す勇姿に、多くの人が感動した」という使い方は正しい?
A1
正しい
Q2
「雄姿」は、勇ましい行動を見せる人間の姿に限定され、勇ましい姿を意味しているため、男女を問わずに使うことができます。という使い方は正しい?
A2
間違い。正解は「勇姿」です。
Q3
「そびえ立つ富士山の勇姿に、観光客は感動した」という使い方は正しい?
A3
間違い。正解は「そびえ立つ富士山の雄姿に、観光客は感動した」です。

Q4
「巨大なダムの雄姿は、まさに技術の結晶である」という使い方は正しい?
A4
正しい
Q5
日本新聞協会では、似たニュアンスを持つ「勇姿」と「雄姿」の表記をより汎用性の高い「〇〇」に統一すると定めていますので、使い分けで迷った場合は「〇〇」を使えば問題ありません。「〇〇」に入る言葉は「勇姿」と「雄姿」どちら?
A5
雄姿

記事の参考文献
- 偏 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版,三省堂.
- 偏 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之(2011)『新明解国語辞典』第七版,三省堂.
- 編著 北原保雄(2010)『明鏡国語辞典』第二版,大修館書店.
- 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2025年3月7日).
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2025年3月7日).
- 編 一般社団法人共同通信社 (2022). 『記者ハンドブック : 新聞用字用語集』第14版,共同通信社.